請求人が譲渡した土地上の2棟の家屋が2階部分で接合されていたとしても、それぞれ独立した居住用家屋であり、併せて一構えの一の家屋であるとは認められないとされ、本件特例の対象となる土地に係る譲渡所得の金額は、譲渡した土地の譲渡所得の収入金額に、各家屋の建築面積に近似する床面積の合計に占める本件甲家屋(請求人が所有し居住用に供していた家屋)の建築面積に近似する床面積の割合を乗じて算出することが合理という判断が示されました。

国税不服審判所令和2年6月19日裁決(国税不服審判所HP)

1.事実関係

本件は、審査請求人(請求人)が譲渡した家屋及び土地に係る譲渡所得について、居住用財産の譲渡所得の3千万円特別控除の特例(本件特例)[1]を適用して確定申告をしたところ、原処分庁が、請求人の譲渡した土地の一部については、当該特例を適用することができない[2]として、所得税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、処分の全部の取消しを求めた事案である。

請求人は、相続により、本件土地及び本件甲家屋を取得し、平成28年11月25日に住民票上の住所を変更するまで、本件甲家屋を居住の用に供していた。請求人の子であるG(及びその配偶者)は、平成9年3月25日、本件土地の上(本件甲家屋の北隣)に、家屋(本件乙家屋)を新築して取得した(以下、本件土地のうち、本件甲家屋の敷地の用に供しているとする土地を「本件甲家屋敷地」、本件乙家屋の敷地の用に供しているとする土地を「本件乙家屋敷地」という。)。なお、本件甲家屋と本件乙家屋は2階の一部が渡り廊下で接合されていた。

その後、請求人及びGらは、平成28年2月21日、Jとの間で、本件土地、本件甲家屋及び本件乙家屋に係る売買契約を締結し、同年11月29日、本件土地並びに本件甲家屋及び本件乙家屋をJに引き渡した。


[1] 措法35条1項、同2項1号参照。

[2] 措令23条1項が準用する同令20条の3第2項1号は、措法35条2項1号に規定する「政令で定める家屋」を、個人がその居住の用に供している家屋とし、その者がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限るものとする旨規定している。

2.争点

本件乙家屋敷地は、本件特例が適用される請求人の居住用財産に当たるか否か。