請求人の母は、非嫡出子であった請求人が成年に達するまでは、請求人の法定代理人として、その財産に関する法律行為についてその子を代表し、その財産を管理する立場にあり、請求人の母は、請求人名義口座開設の平成13年当時、被相続人からの贈与の申込みを受諾し、その結果、平成13年から平成24年に至るまで、当該贈与契約に基づき、その履行として、同母が管理する請求人名義口座に毎年一定の金員が入金されていたと認められるから、請求人名義口座は、被相続人の相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産には含まれないという判断が示されました。
1.事実関係
本件は、審査請求人(請求人)が、相続税の修正申告において課税価格に加算した請求人及び兄名義の普通預金は、いずれも相続開始日の3年より前に被相続人から贈与されたものであるから、相続税の課税対象ではないとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、兄名義の預金についてのみを認める減額更正処分等を行ったことに対し、請求人が、請求人名義の預金も請求人の母が親権者として受贈済みであるから原処分庁の認定には誤りがあるなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。
被相続人Gは、平成29年1月(本件相続開始日)に死亡し、本件相続が開始した。本件相続に係る共同相続人は、Gの妻であるH、GとHの子であるJ・K、GとLの子である請求人及びMの5名である(Gの子4名を併せて「本件子ら」という。なお、Gは、平成27年4月2日、請求人及びMを認知している。)。 Lは、S社の代表取締役を務めるとともに、Gが代表取締役を務めるN社他3法人及びS社の経理事務を担当していた。
Gは、平成13年8月吉日付の贈与証を作成しており、そこには、同年以後、毎年8月に本件子らに金員を贈与する旨及び本件子らの住所氏名が記載された上、Gの署名押印がされていた。
Lは、平成13年8月10日、Gの依頼により、J・K・M・請求人の各名義の普通預金口座をそれぞれ開設した。Lは、平成13年ないし平成24年の各年に一度Gから依頼され、G名義の普通預金口座から現金を出金し、本件子らの名義口座にそれぞれ入金した。Lは、平成27年6月1日、Gの依頼により、J名義預金の残高全額を現金で払い出し(本件金員)、J名義預金の通帳とともにGに引き渡した。その後、Gは、平成27年8月、N社の事務所において、本件金員とともにJ名義預金の通帳をJに手渡した。
請求人は、相続税の申告書(本件申告書)を他の相続人らとともに法定申告期限までに提出したが、本件申告書において、K名義預金、M名義預金、請求人名義預金及び本件金員は、いずれも相続財産に含まれていなかった。その後請求人は、原処分庁の調査を受け、令和2年6月9日、K名義預金及び請求人名義預金は本件相続に係る相続財産であり、M名義預金についても、MがGから相続開始前3年以内に贈与されたものであったなどとして、これらを反映した修正申告書を原処分庁に提出したところ、原処分庁は、令和2年6月30日付で、修正申告書においては、本件金員が本件相続の開始前3年以内にJに贈与されたものであることが反映されていないとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
これに対し請求人は、令和2年10月15日、M名義預金及び請求人名義預金については、いずれも本件相続開始日の3年より前に贈与されたものであったとして、更正の請求をしたところ、原処分庁は、令和3年1月8日付で、M名義預金に係る部分については、更正の請求を認め、請求人名義預金に係る部分については更正の請求に理由がないとして、減額更正処分をし、これに伴う過少申告加算税の変更決定処分をした。この処分を不服として、請求人は審査請求した。