請求人が法定納期限を徒過して源泉所得税等を納付したことについて、原処分庁の調査担当職員が実地調査の日程調整を依頼した時点では、その際の源泉徴収義務の存否に関する発言からは、請求人は署内調査の内容・進捗状況を具体的に認識することはできず、また、請求人は当該納付を自主的に行ったと認められることから、通則法67条2項に規定する「国税についての調査があったことにより当該国税について告知があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するという判断が示されました。

国税不服審判所令和3年1月20日裁決(国税不服審判所HP)

 

1.事実関係

本件は、審査請求人(請求人)が非居住者に支払った土地の購入代金に係る源泉所得税等を法定納期限後に納付したことについて、原処分庁が、不納付加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該法定納期限後の納付については正当な理由がある(争点1)上、仮にこれが認められないとしても、当該納付は調査があったことにより告知があるべきことを予知してされたものではない(争点2)として、原処分の全部又は一部の取消しを求めた事案である。

請求人は、総合建設業等を営む法人であり、平成30年12月28日、Gとの間で宅地(本件土地)を購入する旨の売買契約を締結し、同日、Gに対し手付金を支払ったところ、Gは、平成30年12月31日、香港へ転出した。その後、請求人は、平成31年1月21日、Gに対し、代金の残額(本件代金等)を支払い、同日付で、本件土地の所有権移転登記が行われた。なお、請求人は、本件代金等の支払の際、源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(本件源泉所得税等)をGから徴収せず、法定納期限までに納付しなかった。

原処分庁所属の調査担当職員(本件職員)は、令和元年7月2日、税理士法人HのJに対し、請求人の源泉所得税等について実地調査を行う旨及びその日程調整を依頼する旨の電話連絡をした(本件電話連絡)が、その際、本件職員は、「非居住者からの土地の取得があると思われるので確認させていただきたい。」と発言(本件発言)した。一方、請求人は、令和元年7月5日、手付金及び本件代金等の合計額を基礎として計算した源泉所得税等の額を納付(本件納付)したところ、原処分庁は、令和元年8月5日付で、本件源泉所得税等の額を計算し、その不納付加算税に係る賦課決定処分をした。

2.争点

本件納付が通則法67条2項に規定する「当該国税についての調査があったことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か(争点1は省略)