3.原処分庁の主張

原処分庁は、本件発言を含む本件職員による一連の行為は通則法67条2項に規定する「調査」に該当する上、請求人も本件発言の時点で調査があったことを了知し、その後の調査が進行すれば告知に至るであろうことを予知して本件納付を行ったものといえるから、同項に規定する「当該国税についての調査があったことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない。

4.審判所の判断

(1)法令解釈

源泉徴収による国税が法定納期限までに完納されなかった場合には、不納付加算税を徴収するのが原則である(通則法67①)が、法定納期限後であっても源泉徴収義務者の自発的な納付を奨励する趣旨から、「当該国税についての調査があったことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知」することなく自主的にこれを納付した者に対しては、通常よりも一段低い水準の不納付加算税を徴収する[1]ことにしている(同条②)。このような文言及び趣旨からすると、法定納期限後の納付が、「告知があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否かの判断に当たっては、①調査の内容・進捗状況、②それに関する納税者の認識、③納付に至る経緯、④納付と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。

(2)認定事実

本件職員は、署内調査の結果[2]、請求人が本件源泉所得税等を納付していない可能性が高いと判断し本件電話連絡をした。このことから、本件代金等の支払明細等が確認されるなどして、やがて本件源泉所得税等に係る納税の告知に至る可能性が高い状況にあったといえる。しかし、本件電話連絡において、本件職員は、実地調査の日程調整の依頼をする中で本件発言をしたにすぎず、それ以外に、本件源泉所得税等に関する具体的な指摘、質問等をしたことはなく、それを受けたJも、請求人の経理担当取締役(本件取締役)に、非居住者からの土地購入取引に該当する取引の有無を確認した際に、確認すべき期間を具体的に指定するなどしなかった。

一方、本件取締役は、令和元年7月2日又は同月3日、Jに対し、非居住者からの土地購入取引があった旨を報告したところ、Jから、本件源泉所得税等の納付が必要になる旨の説明を受けたため、Gに対し、請求人が納付する本件源泉所得税等の額を後日支払う意思があることを確認し、本件源泉所得税等の額及び納付方法等をJに相談の上、本件電話連絡のあった日から3日後の令和元年7月5日に本件納付をしたことが認められる。このような経緯に照らせば、本件納付は、請求人自身の自主的な確認によって行われたものと評価すべきであって、署内調査との関連性は乏しいといわざるを得ない。

(3)検討

以上の事情を総合考慮すると、署内調査により、そのまま本件職員による調査が進展すれば、やがて本件源泉所得税等に係る納税の告知に至る可能性が高い状況にあったとは認められるものの、上記(2)のとおり、請求人は、それを具体的に認識しておらず、本件納付も、請求人自身の自主的な確認によって行われたものであって、署内調査との関連性も乏しいといわざるを得ないから、本件納付は、通則法67条2項に規定する「当該国税についての調査があったことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。

(4)原処分庁の主張の排斥

本件発言は、実地調査の日程調整を依頼する中でされたものにすぎず、その内容も抽象的で、具体的な取引内容や調査対象期間も示されていないから、本件発言自体が「調査」に該当するとは認められないし、また、請求人が署内調査の内容・進捗状況を具体的に認識しておらず、本件納付も、請求人自身の自主的な確認によって行われたものであって、署内調査との関連性も乏しいといわざるを得ないことから、本件発言だけをもって、当審判所の判断が左右されることはなく、原処分庁の主張は理由がない。


[1] 税率10%が5%に軽減される。

[2] Gは、平成30年12月21日、香港転出に際し、所得税の納税管理人の届出書を所轄の税務署長に提出(同26日には、消費税の納税管理人の届出書も提出)した。本件職員は、令和元年6月頃、①請求人がGから本件土地を取得し、所有権移転登記が行われたこと、②Gが香港へ転出し、非居住者に該当するに至ったこと、③請求人が非居住者に支払った土地購入代金に係る源泉所得税等の納付がないことを把握した。