5.解説
本件特例(居住用財産の譲渡に係る3千万円特別控除)の適用に際し、同一土地の上に複数の居住用家屋を有する場合の判断については過去に複数の公表裁決[4]があり、いずれも本件裁決で示された、「それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二義的に参酌すべき要素にすぎない」という判断枠組みが用いられている。本判決で審判所は、先例裁決同様、対象となる居住用財産の状況を事実認定し、請求人の主張を排斥したのであるが、原処分に、本件特例の対象となる土地に係る譲渡所得の計算誤りがあり、その結果、本裁決の結論は最終的に一部取消しとなった[5]。
[4] 平成19年2月7日裁決(東裁(所)平18-169)、平成30年9月27日(福裁(所)平30-4)等。
[5] 国税不服審判所の審理に係る「総額主義」については本稿第23回脚注2参照のこと。
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