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相続で取得した上場株式の取得費の判断~1~ 元国税審判官が解説 公表裁決から学ぶ税務判断のポイント(第1回)

有価証券を相続するケースは少なくありませんが、税の実務上で頭を悩ませる一つに、取得費の判断があります。そこで、今回から2回にわたり、相続により取得した上場株式等の譲渡について、合理的な取得費の推定方法と認定された事案があったので、これを取り上げます。

相続により取得した上場株式の取得費について、被相続人の名義書換日の終値により算定することが相当であると判断した事例【所得税(譲渡所得)】(その1)

国税不服審判所令和元年11月28日裁決(国税不服審判所HP)より

1.事案の概要

本件は、上場株式等を売却した審査請求人(以下「請求人」という。)が、所得税等の修正申告において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡損失の金額等を新たに計上したところ、原処分庁が、当該譲渡損失の金額等を修正申告に計上することはできないとして、また、申告漏れとなっていた一般口座内株式について概算取得費を用いて上場株式等の譲渡所得の金額を計算して、所得税等の更正処分等を行ったことから、請求人が原処分の一部の取消しを求めた事案である。

2.争点

  • (1)本件修正申告において、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、損失金額を算入することができるか否か、また、上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、配当等金額を算入することができるか否か(争点1)。⇒裁決書からの詳しい引用は省略する。
  • (2)各株式の取得費について、概算取得費を用いることができるか否か(争点2)。

3.事実関係

請求人は、平成平成28年1月に被相続人から上場株式等を相続により取得し、当該株式について、同年3月、2つの証券会社に、源泉徴収選択口座以外の特定口座(以下「簡易口座」という。)、源泉徴収選択口座である特定口座(以下「源泉口座」という。)及び特定口座以外の口座(以下「一般口座」という。)の3種の口座に振り分けた[1]。なお、簡易口座と源泉口座は別々の証券会社に設けられている。その後請求人は上記取得株式中1銘柄を除き、平成28年中に、全て譲渡したが、平成28年分の所得税等の確定申告において、当該譲渡に係る所得の金額及び利子所得・配当所得についても、いずれも申告しなかった。

請求人は、平成29年9月、簡易口座における所得の金額並びに源泉口座の損失の金額及び源泉口座内の配当の金額を含めた修正申告書を提出したところ、原処分庁は、源泉口座の損失金額及び配当金額はいずれも修正申告に計上することができず、また、一般口座に係る譲渡所得が申告漏れである等の更正処分を行った。


[1] 請求人が、取得した株式を3つの異なる口座に振り分けたことについては、何らかの意図があったものと推察されるが、その辺の事情については裁決書では何等述べられていない。

4.双方の主張(争点2について)

5.審判所の判断(争点2について)

イ 法令解釈等

措置法通達37の10・37の11共―13《株式等の取得価額》は、納税者が、株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額に関し、譲渡をした同一銘柄の株式等について、(収入金額の100分の5に相当する)概算取得費を当該株式等に係る譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除するときは、これを認める旨定めている。このことは、取得費の額について、納税者の利便性も考慮し、納税者の利益に反しない限り、簡便な計算方法によることを認める趣旨である。

そうすると、原処分庁が課税処分を行うに当たって、その調査を尽くしても取得時期及び取得価額が明らかにならない場合及び概算取得費を取得費の額とすることが納税者の利益と認められる場合において、概算取得費を用いることも相当である。

ロ 検討

本件においては、各株式の取得価額について、これらを直接的に立証する客観的な証拠資料等が確認できないところ、各株式についてその名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、合理性を有する取得価額の把握方法であると解される。

そして、各株式は被相続人が有償取得したものと推認され、また、各株式について、被相続人に係る顧客勘定元帳及び有価証券明細簿並びに各株式の名義書換代理人からの回答等を検討したところ、各株式のうちの一部は、名義書換日が判明したところ、その他については、最初の名義書換日が判明しなかった。

以上を前提とすれば、名義書換日判明分株式の取得費については、概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定することが相当であり、また、判明分株式のうち、一部の株式の取得費については、概算取得費により算定した金額が総平均法に準ずる方法により算定した金額を上回るため、概算取得費により算定するのが相当である。

また、最初の名義書換日が判明しなかった株式については、その取得費についても、概算取得費により算定するのが相当である。

ハ 原処分庁の主張について

原処分庁は、上記「原処分庁」欄のとおり、本件各株式の取得費については、できる限りの調査を尽くしたものの、有償で取得した上場株式等はごく一部であり、大部分の上場株式等の実際の取得価額は判明しなかった旨主張する。

しかしながら、上記ロでみたとおり、本件各判明分株式の取得費については、名義書換日及びその時期の相場(終値)を確認することで取得価額を算定することが可能であるといえるから、総平均法に準ずる方法により算定すべきである。

したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。

(第2回に続く)

 

国税不服審判所令和元年11月28日裁決(国税不服審判所HP)


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著者: 霞 晴久

公認会計士・税理士

監査法人トーマツ、新日本監査法人、国税不服審判所を経て現在は霞晴久公認会計士事務所長
監査法人時代は、会計監査、海外勤務(欧州に通算14年駐在)及び不正調査に従事。
現在は税務と不正調査の「二刀流」を強みとしている。
主な著書(共著)として、「欧州主要国の税法」(2002年)及び「新版架空循環取引」(2019年)がある。
事務所HP:https://kasumi-cpa.com/

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