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【コラム】財務省 可部国税庁長官は財務事務次官レースで後れをとった!?

2020年7月4日の財務省人事で、事務方トップの事務次官に太田充主計局長(60)が、その後釜の主計局長に矢野康治主税局長(57)が就任した。矢野氏の主計局長就任は、財務省内部でも「ビックリ人事」と囁かれており、本命視されていた入省同期の可部哲生理財局長(57)に用意されていたのは、国税庁長官ポストだった。これで次期次官レースは、矢野氏が一歩リードという見方が強いが、可部氏の巻き返しはあるのか・・・。

「最強官庁」と言われる財務省人事で、事務方トップである事務次官に太田充主計局長が就任した。事務次官の王道コースは、主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官と上がっていく。とくに、最終段階は、「主計局長→事務次官」が既定コースだ。

それでいくと太田氏は、2012年主税局審議官→2013年主計局次長(三席)→2014年主計局次長(次席)→2015、16年総括審議官→2017年理財局長→2018、19年主計局長と、ほぼ王道コースを歩んできている。

ただ、入省同期には、早くから事務次官候補と期待されてきた岡本薫明氏(2018、29年に財務事務次官)がいた。岡本氏は、2012年主計局次長(三席)→2013年主計局次長(次席)→2014年主計局次長首席→2015、16年官房長→2017年主計局長→2018、19年事務次官と、総括審議官こそやっていないだけで、入省同期の太田氏より先に事務次官ポストの王道コースを歩んできた。つまり、太田氏が次官ポストを射止めるには、同期から2人という、高いハードルを越えなくてはならなかったのだ。

しかし、先輩の1979年(昭和54)年入省組で異変が。木下康司氏、香川俊介氏、田中一穂氏と、同期で次官が3人誕生するという異例中の異例人事が行われたのだ。そのため、それ以降の人事にも影響することになった。もっとも田中氏は、安倍晋三首相政権下でなければ次官にはなれなかったとも言われている。田中氏は、第1次安倍政権時代に首相秘書官、第2次安倍内閣では法人税実効税率引き下げなどの財政政策に尽力し、安倍首相の信任が厚く、次官ポストは首相官邸からの意向がかなり影響したと言われている。

今回、事務次官に就任した太田氏も、理財局長時代に森友学園への国有地売却を巡る決裁文書改ざんを主導した佐川宣寿元理財局長の後任として、国会での説明を担当。主計局長時代には、2019年10月からの消費税率引き上げや新型コロナ対策に尽力し、首相官邸から信頼が厚かったといわれる。

つまり、財務省トップ人事は、今や安倍首相の意向がかなり強く働いているとの声をきく。

財務事務次官ポストの次の人事については、今のところ、主計局長ポストを射止めた矢野氏が一歩リードと見る向きが強いが、国税庁長官に就いた可部氏という路線も消えたわけでない。

2人の経歴を見ていくと、

矢野氏は、2012~15年まで官房長官秘書官、2016年主税局審議官→2017、18年大臣官房長→2019年主税局長→2020年主計局長

可部氏は、2012年主計局総務課長→2013年官房総合政策課長→2014年国際局審議官→2015年主計局次長(次席)→2016年主計局次長(主席)→2017年総括審議官→2018、19年理財局長→2020年国税庁長官

と、2018年までは可部氏が次官ポストの王道コースを歩んできた。

矢野氏は、2017、18年と大臣官房長になったものの、主計局での経験は多くなく、次官ポストの王道コースから大幅に外れている。ただ、菅義偉官房長官のもとで秘書官を4年務めてきたことから、首相官邸からの信任が厚く、主税局審議官から大臣官房長、そして主税局長、主計局長と、サプライズ人事で一気に事務次官ポストが手に届くところまできた。実は、主税局長から主計局長への横滑り人事も異例だ。

2000年に事務次官となった武藤敏郎氏(現・2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会事務総長)から今回の太田氏まで、「主計局長→事務次官」というのが王道コース。それからすると、矢野氏が次期事務次官というのが有力だが、実は1999年就任の薄井信明氏や1996年の小川是氏は、国税庁長官から事務次官というコースを歩んでいる。ただこのときは、住専処理など一連の「大蔵スキャンダル」で事務次官が続けて任期途中で辞任、また幹部が処分されたことなどから官邸主導で「主計局長→事務次官」路線をあえて外していたと見られる。

それと、小川氏、薄井氏ともに消費税導入や税率アップ(3%~5%)に貢献しており、政権から高い評価を受けていた。ちなみに、消費税率の10%アップ、軽減税率の導入においては、矢野氏が主税局長として陣頭指揮をとったことが政権から高い評価を受けている。

ここにきて、矢野氏に先を越された感の強い可部氏だが、ポスト安倍の最有力候補と目される、岸田文雄・自民党政調会長の妹が妻で、岸田政調会長をはじめ、経世会の政治家との付き合いが深いとされる。そのため、仮に岸田首相が誕生したら、一気に事務次官ということも考えられる。

可部氏は、祖父が最高裁判事を務めた可部恒雄氏。父も東大卒で国立大学病院の医長を務めたエリートで、普通の官僚とは毛並みが違う。それに、可部氏本人も、アメリカ大使館勤務時代に、時間があったとの理由でニューヨーク州弁護士、米国公認会計士の資格を取得したという逸話があるほどの秀才だ。

一方、矢野氏は、大臣官房文書課でキャリアをスタート。2005年には財政健全化を謳った著書を上梓するなどしているが、人事的には次官コースの王道から外れてきた。財務省内部でもこれほど出世するとは誰も想像すらしておらず、財務省幹部になると登竜門で各年次の出世頭が就く主計局総務課の主計企画官にも就いていない。

ただ、菅官房長官の下で、官房長として財務省悲願の消費税10%導入に尽力。また、セクハラ辞任した福田淳一元事務次官の聞き取り調査を担当した人物だ。

財務省の事務次官は、学歴で見ていくと東京大学法学部卒が本筋で、それ以外は東京大学経済学部、京都大学が数名。可部氏は東京大学法学部卒だが、矢野氏は一橋大卒。もし、矢野氏が事務次官に就けば、一橋大学初の快挙だ。

令和2事務年度はコロナ禍の影響で、財政面・税収面で財務省幹部の力量が試されるとき。平常時と違った“人事評価”がなされる可能性が高いだけに、次期事務次官レースから目が離せない。

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著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
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