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同族会社の元代表者が、原処分庁のいうみなし役員には該当しないとされた事例【法人税/全部取消し】元国税審判官が解説 公表裁決から学ぶ税務判断のポイント(第32回)

元代表者が実質的に退職していなかったと主張する原処分庁の主張の根拠は、いずれもその裏付けとなる退職当時の客観的な証拠がなく、①各関係者の各申述においても、本件元代表者の請求人への具体的な関与状況が明らかではない、②元代表者は、退職後に請求人から報酬等を受領していない、③元代表者の退職後に請求人の代表取締役となった者が、その代表取締役としての職務を全く行っていなかったと認めるに足りる証拠もないことなどから、元代表者が退職後も継続して、本件各法人の経営に従事していたと認めることはできず、元代表者に支払った金員は、退職給与として、請求人らの損金の額に算入されるという判断が下されました。

国税不服審判所令和2年12月15日裁決(国税不服審判所HP)

1.事実関係

本件は、請求人が元代表取締役(本件元代表者)に対して支給した退職金の金額を損金の額に算入して法人税等の申告をしたところ、原処分庁が、本件元代表者は、登記上退任した後も請求人の経営に従事しており、実質的に退職したとは認められないから、本件金員は退職給与として損金の額に算入されないとして、法人税等の更正処分等を行ったことに対し、請求人が、本件元代表者は形式的にも実質的にも退職したのであるから、本件金員は損金の額に算入されるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

請求人は、昭和36年10月に設立された不動産の賃貸等を営む株式会社で、平成25年3月期にはH(本件元代表者の長男。8割超の株式保有)及びJに株式の全部を保有されていた同族会社である。請求人は平成24年11月30日、代表取締役及び取締役を辞任(本件辞任)した本件元代表者に対し、臨時株主総会の決議に基づき、役員退職金規程により算出した7億2千5百万円(本件金員)を役員退職慰労金勘定に計上し、同年12月18日から平成25年9月9日までの間に、源泉所得税額控除後の全額を支給した。本件元代表者は、平成24年12月1日以降平成29年3月31日までの期間において、請求人の登記上役員としての地位を有しておらず、使用人でもなく、また、上記期間において、役員給与及び従業員給与が支給された事実もなかった。なお、Hは、平成25年当時、請求人を含むグループ法人10社(本件法人グループ)内の持株会社U社の全株を保有していた(ただし、U社は請求人との間で直接の資本関係はない)。

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