修繕工事の施工業者が交付した請求書の納品日が事実と異なっていたとしても、請求人が当該修繕工事の完了日を請求書の納品日とする旨を依頼した事実が認められないことから、相手方との通謀による虚偽記載とは認められず、また、故意に事実をわい曲したと評価すべき行為は見当たらないことから、請求人が当該修繕費を損金の額に算入したことについて、通則法68条1項に規定する仮装に該当する事実があるとは認められないとの判断が下されました。

国税不服審判所令和2年3月10日裁決(国税不服審判所HP)

1.事実関係

本件は、審査請求人(請求人)が、建物の修繕工事に係る費用(本件修繕費)を事業年度終了の日付で修繕費に計上し、当該修繕費を損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、原処分庁が、請求人の代表取締役は、当該修繕工事が事業年度終了の日までに着工すらしておらず、当該修繕費を損金の額に算入できないことを認識した上で、当該修繕工事の施工業者に請求書を発行させることによって損金の額に算入したのであるから、その行為は事実の仮装に当たるとして法人税等の重加算税の賦課決定処分等をしたのに対し、請求人が、仮装の事実はないとして原処分の一部の取消しを求めた事案である。

請求人は、不動産売買業及び不動産管理業を営む法人であり、賃貸用の集合住宅を取得したところ、当該住宅に雨漏りが発生していたため、H社から、その防止のための修繕工事(本件修繕工事)の見積書の交付を受け、本件工事の実施を依頼した。その後、請求人は、H社から、「納品日」欄に「3.30」等と記載された平成30年3月31日付の請求書(本件請求書)の交付を受けたが、本件修繕工事は、請求人の平成29年4月1日から平成30年3月31日までの事業年度(本件事業年度)終了の日までに完了しなかった。