5.解説

(1)「住所」の意義と借用概念

居住者と非居住者の区分については、当該個人の「住所」がどこにあるかによって決定されるが、所得税法上その意義は明らかにされておらず、民法からの借用概念[3]によって解釈される。すなわち、「住所」は、「各人の生活の本拠をその者の住所とする」(民21)とされ、「住所が知れない場合には、居所を住所とみなす」(民22)と規定されているので、租税法においても、各人の生活の本拠等が住所であると解されている。ただし、民法上「どこが生活の本拠であるか」については、定住の意思を必要とするいわゆる「意思主義」と客観的事実によって決定されるとするいわゆる「客観主義」との2説があるが、意思主義による場合には、本人の意思によって住所の有無、したがって課税所得の範囲が左右されることになるばかりでなく、定住の意思は通常外部から認め得ない場合が多いことから、所得税法基本通達2-1は、「法に規定する住所とは各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する」と定め、所得税法上の住所は、客観主義によるものであることを明らかにしている。同通達でいう「客観的事実」とは、本裁決で示された①滞在日数、②生活場所及び同所での生活状況、③職業並びに業務の内容及び従事状況、④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地、⑤資産の所在、⑥生活に関わる各種届出状況等に他ならない。審判所は、かかる事実を一つ一つ丁寧に積み上げて合理的な結論を導いている。

(2)賦課決定処分の適法性について

請求人は、平成27年12月31日、平成28年12月31日及び平成29年12月31日において、その価額の合計額が5千万円を超える国外財産を有していたため、本件各年分につき、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)5条《国外財産調書の提出》1項本文に規定する国外財産調書の提出義務があったにもかかわらず、これらをいずれも法定提出期限内に提出しなかった。このため、原処分庁が、各年分の無申告加算税の金額につき、通則法66条《無申告加算税》並びに国送法6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》2項の規定に基づき、特に後者の加算措置[4]を適用したことについて、審判所により、同加算措置を適用したことは適法という判断が示された。


[3] 借用概念については、金子宏『租税法 第23版』(弘文堂 平成31年)127頁参照。

[4] 国送法6条2項は、通則法65条又は66条の規定による過少申告加算税又は無申告加算税の額は、これらの規定により計算した金額に、各加算税の計算の基礎となるべき税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算する旨規定している。なお、同加重措置については、通則法65条5項の規定の適用がある修正申告書についても適用されるか否が争われた平成29年9月1日裁決(国税不服審判所HP)がある。


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