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2021年版 4大監査法人決算分析 第2回 EY新日本有限責任監査法人

2021年版4大監査法人の決算分析シリーズ。第2回は監査業務収入でトップに立ち、業務収入が2期連続で1,000億円を超えるなど業績が回復しつつあるEY新日本有限責任監査法人(以下EY新日本)について、2021年度を中心に直近5期の決算を分析していきます。

1.業務収入

まずは業務収入、いわゆる売上の推移から見ていきます。

(1) 売上推移

* 「業務及び財産の状況に関する説明書類」(*1)をもとに作成。なお特に断りがない限り、単位は百万円(切捨)(以下 同)。

2021年6月期(以下、2021年度)の売上は1,040億円となり、前期比+20億円(+2.0%)の増収となっています。

売上は2期連続で1,000億円を超え、ここ5年間では2018年度の989億円を底として回復基調にあると言えます。なお2017年度からの年平均成長率(以下、CAGR)は+1.0%となっています。

決算書上、売上は監査業務と非監査業務に分けられています。続いて、業務ごとに推移を見てみます。

(2) 監査業務

① 売上推移

2021年度の売上は887億円となり、前期比+27億円(+3.1%)の増収となっています。

監査売上はきれいな右肩上がりとなっており、2017年度からのCAGRは+2.4%で全体の伸び(+1.0%)を超えていることから、監査業務がEY新日本の売上をけん引していることが分かります。

なお2021年度の監査売上887億円はほかの大手監査法人を抑えて業界トップです。

(参考 大手監査法人の監査売上推移)

* トーマツの2017年度数値は決算期変更に伴う8カ月分

② クライアント数推移

2021年度の監査クライアント数は3,681社となり、前期比△28社(△0.8%)となっています。

クライアント数については、グラフにはない2009年度の4,236社をピークとして減少傾向にあり、売上とは異なるトレンドとなっています(*2)。数年前の会計不正問題に端を発するクライアント流出に加え、監査法人におけるワークライフバランスの適正化に伴う絞り込みや採算面からの厳選といった影響があるかもしれません。

③ 1社あたり売上推移

* 1社あたり監査業務収入=監査業務収入÷(期首期末の平均監査クライアント数)

2021年度の1社あたり売上は2,400万円となり、前期比+116万円(+5.1%)となっています。

グラフを見ると売上と同じ右肩上がりのトレンドになっており、4期前の2017年度(2,048万円)と比べると+17%と大きく上昇し、CAGRは+4.0%となっています。監査売上のCAGR(+2.4%)に対して単価の上昇は大きく、増収の要因は単価のアップにあることが分かります。

以上より、監査業務の売上についてはクライアント数減少を単価アップで吸収し、全体として収入は増加しています。このトレンドはここ数年継続しており、前回分析した有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)と同様となっていることから、大手監査法人の監査に対する方針が推測出来るのではないでしょうか。

(3) 非監査業務

① 売上推移

2021年度の売上は153億円となり、前期比△6億円(△4.2%)と減収となっています。

2018年度以降は150億円前後で推移しており、監査に比べると伸び悩んでいる様子が分かります。なお、こちらもグラフにはない2015年度の215億円をピークに2019年度の147億円まで減少を続け、ここ2期は下げ止まっているようにも見えます(*2)。

EY新日本は2017年度に組織再編を行っており、非監査業務の一部をEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社に移管しています。その影響もあり、2017年度~2018年度にかけては△36億円と大きく売上が減少しています。

非監査業務についてもクライアント数と1社あたりの売上に分けてみてみます。

② クライアント数推移

2021年度の非監査クライアント数は2,152社となり、前期比△96社(△4.3%)となっています。

ここ5期でみると右肩下がりとなっており、5年間で980社減少し、率で見ると△31.3%と約1/3減少しています。また直近ピークの2015年度3,583社と比較すると2021年度は60%にとどまります。同じくクライアント数が減少傾向にある監査業務に比べても減少幅は大きいものになっています。

③ 1社あたり売上推移

* 1社あたり非監査業務収入=非監査業務収入÷(期首期末の平均非監査クライアント数)

2021年度の1社あたり売上は696万円となり、前期比+17万円(+2.6%)となっています。

2018年度の534万円を底として上昇に転じ、2021年度はここ5年間で最も単価が高くなっています。とはいえトーマツ(2021年度1,315万円)などと比べるとその差は歴然としています。

以上より、非監査業務については単価こそ上昇基調にあるものの、クライアント数減少のインパクトが上回り、全体として横ばいないし減収というトレンドになっています。

 

EY新日本はここしばらく非監査売上を伸ばすことが出来ておらず、大手の中で4位が定位置になってしまっています。EY新日本が伸び悩む一方、トップのトーマツは2021年度に404億円を記録して過去最高となっており、その差は2倍以上に広がっています。

(参考 大手監査法人の非監査売上推移)

(単位:百万円)

* トーマツの2017年度数値は決算期変更に伴う8カ月分

EY新日本の売上についてまとめると、監査/非監査いずれもクライアントが減少している、もしくは絞り込んでいる分を報酬の増加や高単価の契約獲得によりカバーし、売上全体としては回復基調が続いていると見ることが出来ます。また、ここまで触れていませんが、IPO監査実績では2018~2020年の3年間にかけて首位となっており(* 3)、この分野をさらに育てることで今後の業績拡大が期待できるかもしれません。

次に費用に目を向けてみます。

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