2.業務費用

(1) 業務費用推移

2021年度の業務費用は1,034億円となり、前期比+18億円(+1.8%)となっています。

2018年度から増加している売上と足並みを揃えて費用も増加しており、2017年度からのCAGRは+1.4%と、売上のCAGR+1.0%を上回っています。なお売上に占める業務費用の割合(業務費用比率)は99.4%となり、ここ5年間は97.8%(2017年度)~99.6%(2019年度)で推移しています。直近3年間は100%近くとなっており、高い比率が続いています。

* 業務費用比率=業務費用÷業務収入

EY新日本は、業務費用を「人件費」「人材開発費用」「施設関連費用」「IT及び通信費」「その他業務費用」の5つに分類しており、そのうち「人件費」は業務費用の7割を占める最大のコストとなっています。次に「人件費」の推移を見てみます。

(2) 人件費推移

2021年度の人件費は694億円となり、前期比+26億円(+3.9%)と増加しています。

人件費推移は売上や業務費用のグラフとほぼ同じ形となっており、トーマツ同様、労働集約的な監査法人のビジネスモデルをよく表しています。人件費の増加理由を紐解くため、人員数と1人当たりの人件費に分けてみてみます。

(3) 人員数推移

2021年度の人員数は5,686人となり、前期比+132人(+2.4%)となっています。

2017年度~2018年度にかけて実施した構造改革に伴うリストラにより人員数は大きく減少しましたが、その後は5,500人程度で落ち着いているようです。ここ3期を見ると業務費用や人件費同様、売上の増加に合わせて人員数も増加していますが、人件費の増加+6.4%に対して人員数は+3.5%にとどまり、増加幅は抑制されたものになっています。

(4) 1人当たり報酬給与・賞与推移

* 1人当たり報酬給与・賞与=(報酬給与+賞与)÷(期首期末の平均人員数)

2021年度の1人当たり報酬給与・賞与は1,022万円となり、前期比+40万円(+5.7%)と増加しています。

従来、1人当たり報酬給与・賞与は800~900万円前後で推移していたものの、2021年度は1千万円を超える水準となり、これはトーマツ(1,023万円)と同水準です。内訳を見ると、報酬給与が+31億円(+7.2% 2020年度445億円→2021年度477億円)増加しているのに対して賞与は+0.3億円(+2.3% 2020年度96.3億円→2021年度96.6億円)とほぼ横ばいとなっています。

なお人員の内訳に目を向けると、前期比+132人のうち、使用人(試験合格者等)が+95人、監査補助者が+87人となっており、社員や使用人(公認会計士)に比べると報酬水準が低いと想定される構成員が増加しています。この状況を踏まえると、公認会計士等に対する1人当たり報酬給与・賞与はさらに増加している可能性があります。

(参考 人員数)

(5) その他の業務費用

項目別の業務費用推移を見てみます。

* 2017年度は業務費用の明細を機能別に分類して開示しておらず、そのままだと比較できないため、以下の区分にて組み替えを行っている。

人件費:報酬給与、賞与、退職給付費用、社員退職引当繰入、法定福利費、福利厚生費、支払報酬

施設関連費用:賃借料、減価償却費

その他業務費用:上記以外の合計

 

人件費以外の費用ではIT及び通信費が5億円増加しているものの、人材開発費用△8億円(うち研修関連費用△6億円、採用関連費用△1億円)、施設関連費用△3億円(うち施設賃借料△2億円)など、コロナの影響等により費用は減少傾向にあります。

なおその他業務費用は△2億円ですが、業務委託費+21億円、会費+2億円といった増加分を旅費交通費△13億円、その他△9億円、貸倒引当金繰入額△3億円により打ち消した形になっています。

その他については2020年度11億円に対して2021年度1億円と大きく減少していますが、開示資料からは内容不明です。

貸倒引当金繰入額については、2020年度1億円に対して2021年度△2億円と大きく減少しています。附属明細書をみると、貸倒引当金繰入額のマイナス(戻入)は「債権の回収による戻入額及び一般債権の貸倒実績率による洗替額」とあります。貸借対照表では投資その他資産に計上されている貸倒引当金が減少していることから、引当金計上済みの債権回収が発生したようです。

(参考 その他業務費用明細)

業務費用についてまとめると、コロナ影響による旅費交通費や人材開発費用等、またその他業務費用・その他の減少があったものの、人員数増加や1人当たり報酬給与・賞与のアップに伴う報酬給与増等により、全体として費用増と言えそうです。ただし売上増(+2.0%)が費用増(+1.8%)を上回ったことで業務費用比率はやや低下し(2020年度99.6% 2021年度99.4%)、増収効果も加わり増益決算となっています(「4.利益」参照)。