海外取引に係る源泉所得税の調査事績を見ると、非違が把握された件数のうち約20%超が「使用料」に関する誤りとなっています。使用料については国内法の規定と租税条約の規定が異なることが多いことから、租税条約についてもよく理解しておく必要があります。
源泉徴収が必要な使用料
非居住者や外国法人に使用料を支払う場合には、原則として源泉徴収が必要となります。
源泉徴収が必要となる使用料について、国内法では次のように規定されています。
『国内において業務を行う者から受ける次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係るもの。
- 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料又はその譲渡による対価
- 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価
- 機械、装置、車両及び運搬具、工具、器具、備品の使用料』
使用地主義と債務者主義
源泉徴収の対象となるのは、使用料が国内源泉所得となる場合です。使用料が国内源泉所得となるかどうかを判定する上で、「使用地主義」と「債務者主義」という2つの考え方があります。この2つの違いを押さえておくことは重要です。
「使用地主義」とは、その使用料の発生の元となる権利や資産を実際に使用している国が使用料の所得源泉地であるとする考え方です。もし使用料の発生の元となる権利や資産が日本国内で使用されていれば国内源泉所得となり、源泉徴収の対象となります。国内法はこの「使用地主義」を採用しています。
一方、「債務者主義」とは、使用料の支払者の居住地をその使用料の所得源泉地とする考え方です。すなわち、日本法人が支払う使用料については国内源泉所得となり、源泉徴収の対象となります。権利や資産がどこで使用されたかは関係ありません。租税条約の多くは、この「債務者主義」を採用しています。
例えば、日韓租税条約12条4項では、「使用料は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。・・・」と規定されており、使用料の支払者(=債務者)の居住地国に所得源泉があることになります。