国税庁はこのほど「令和元年分の国外財産調書の提出状況」を公表しました。提出件数は10,652件、財産の合計額は4兆2,554億円と前年より増加した一方で、税務調査により国外財産に係る申告漏れを指摘され、加算税の5%加重措置の適用を受けた件数は475件と倍増しました。
国外財産調書の提出状況
5,000万円を超える国外財産を保有する者は、翌年の3月15日までに当該国外財産の種類、数量及び価額等を記載した「国外財産調書」を提出しなければなりません。
国税庁はこのほど「令和元年分の国外財産調書の提出状況」を公表しました。
以下のグラフは過去7年間の提出件数と財産総額の推移を表したものです。提出件数、財産増額ともに年々増加しています。
【国外財産調書の提出件数と財産総額の推移】

国税庁が公表したデータによると、国外財産調書の提出件数は10,652件(前年比6.9%増)、財産総額は4兆2,554億円(前年比9.2%増)となりました。
財産の種類別の構成比では、有価証券が最も多く全体の5%を占め、次いで預貯金、建物、貸付金、土地の順となっています。

加算税の加重・軽減措置の適用状況
国外財産調書には、適正な提出を確保するためのインセンティブ措置として加算税の軽減・加重措置が設けられています。
調書の提出がない場合又は提出された調書に記載のない国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときには、過少申告加算税・無申告加算税を5%上乗せされます。
一方で、提出された調書に記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときには、同加算税が5%軽減されます。
また、令和2年度税制改正で、国外財産を有する者が、税務当局から国外財産調書に記載すべき国外財産に関する資料(取引明細などのフロー情報等)を指定された期限(60日を超えない範囲)までに提示・提出をしなかった場合には、加算税の加重・軽減措置を以下の通りとする特例が創設されました。
- ・加算税の軽減措置は適用しない
- ・加重措置については、加算する割合を5%→10%とする
この取扱いは、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に取得した相続国外財産に対する相続税について適用されます。
税務調査によって、加算税の加重・軽減措置が適用された件数の推移は以下の通りとなっています。

これによると、令和元年度では475件で加算税の加重措置の適用を受けており、前年の245件からほぼ倍増しています。国外財産調書の提出件数自体は年々増えているものの、5,000万円を超える国外財産を保有しているにも関わらず、調書を提出していない者が多いのは明らかです。