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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:国税庁が国外財産調書の提出状況を公表 加算税5%加重は194件

国税庁から「平成29年分の国外財産調書の提出状況」が公表されました。制度の導入から5年目の平成29年度は、提出件数は9,551件、財産の合計額は3兆6,662億円と前年より増加しました。一方で、税務調査により国外財産に係る申告漏れを指摘され、加算税の5%加重措置の適用を受けた件数は194件となりました。

国外財産調書の提出状況

その年の12月31日において5,000万円を超える国外財産を保有する者は、翌年の3月15日までに当該国外財産の種類、数量及び価額等を記載した「国外財産調書」を提出しなければなりません。
「平成29年分の国外財産調書の提出状況」が国税庁から公表されました。
以下のグラフは過去5年間の提出件数と財産総額の推移を表したものです。提出件数、財産増額ともに前年を上回りました。

【国外財産調書の提出状況】

(注)各年分の提出件数・財産総額については、それぞれ翌年の6月末までに提出されたものを集計したものである。 (出典:国税庁発表資料)

平成29年分について、財産の種類別の金額は次の通りであり、有価証券が最も多く、全体の52.5%を占めています。

(出典:国税庁発表資料)

加算税の加重・軽減措置の適用状況

国外財産調書については、適正な提出を確保するためのインセンティブ措置として加算税の軽減・加重措置が設けられている点が特徴的です。
調書に記載された国外財産について申告漏れがあった場合には、加算税が5%軽減されるのに対し、調書に不記載の国外財産について申告漏れがあった場合には、加算税が5%上乗せされるペナルティーが設けられています。
平成29年度に行われた税務調査によって、加算税の軽減・加重措置が適用された件数、申告漏れ金額は以下の通りとなっています。

平成29年度では194件で加算税の加重措置の適用を受けました。国税庁では、国外財産に関する情報の蓄積を着々と進めており、今後、海外資産に関連した税務調査が強化されていくものと思われます。

申告漏れ事例

【事例1:国外財産調書の記載内容から不動産所得・利子所得の申告漏れが把握された事例】

日本の居住者である調査対象者が税務署に提出している国外財産調書の記載内容から、 調査対象者がX国に不動産と銀行口座を保有している事実を把握したものの、国外不動産については不動産所得の申告が、国外預金については利子所得の申告が無かったため調査を実施しました。 調査の結果、不動産登記情報等から調査対象者はX国に保有する不動産を貸付の用に供しており、不動産所得の申告が必要であることが判明しました。また、X国に保有する国外預金から利子が発生しており、利子所得の申告が必要であることが判明しました。

≪コメント≫
国外財産調書に記載された財産と、確定申告書で申告された所得との整合性は必ずチェックされるといっていいでしょう。海外に預金や不動産を保有しているにも関わらず、それらから生じた利子や不動産所得が申告されていなければ当然、申告漏れが疑われます。
預金の利子については、国内において支払いを受ける利子については源泉徴収で課税が完結する源泉分離課税が採用されていますが、海外で開設した預金口座の利子については、日本で源泉徴収する仕組みはないため、利子所得として他の所得と合算して確定申告しなければなりません。この利子所得の申告漏れは多く見られるので注意が必要です。

【事例2:外国当局からの自動的情報交換資料から海外の預金利子、不動産譲渡益の申告漏れが把握された事例】

X国からの自動的情報交換資料により、調査対象者が保有する海外の預金に係る利子が生じている事実を把握したため、詳細を解明すべく調査に着手しました。 調査の結果、調査対象者は、X国の銀行に多額の預金を保有し、その預金から生じた利子が申告漏れとなっていたことが判明しました。 また、調査の過程で、海外に所有していた不動産を売却している事実を把握したため、 不動産売却に関する書類を確認したところ、不動産の譲渡益が発生し、申告漏れとなっていたことが判明しました。
なお、調査対象者は、3億円以上の国内財産、5千万円超の国外財産を保有しているにも関わらず、財産債務調書及び国外財産調書を提出していなかったため、各調書の提出を求め、提出を受けるとともに、国外財産に係る申告漏れに対して加算税を5%加重し賦課しました。

≪コメント≫
「自動的情報交換」は、法定調書から把握した非居住者等への支払 (利子、配当、不動産賃借料、給与・報酬等)についての情報を、税務当局間で交換し合うものです。税務署では、海外の税務当局から提供された情報と、確定申告の内容とを照合し、申告漏れがないかチェックしています。平成29年度では、12万3千件の情報が海外の税務当局から提供されています。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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