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不動産売買代金に対する源泉徴収義務が争点となった事案:元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識

非居住者や外国法人から国内にある土地や建物等を購入し、対価を支払う場合には、原則として10.21%の源泉徴収が必要となります。今回紹介する事案は、不動産売買代金の支払者には「譲渡人が非居住者か否か」を確認すべき義務があるところ、当該義務を尽くしていなかったとして支払者に源泉徴収義務があると判断された事案です(平成28.5.19東京地裁、平成28.12.1東京高裁)。

今回紹介する事案は、不動産会社であるA社が、国内にある不動産の売買代金を売主Pに支払う際、売主Pが非居住者とは思わず源泉徴収を行わなかったところ、税務調査によって売主Pは非居住者に該当し、A社は不動産売買代金について源泉徴収義務を負うとして、源泉所得税の納税告知処分を受けた事案です。
A社は処分を不服として争いましたが、裁判所は、売主Pは非居住者に該当し、またA社は売主Pが非居住者であるかどうかを確認すべき注意義務を尽くしていなかったとして、この納税告知処分は適法であるとの判決を下しました。
この事案のポイントは、国内に所在する不動産の買主は、売主が非居住者であるか否かを確認すべき義務を負うと判断された点です。

事実関係

① 売主Pは、国内にある土地・建物を不動産会社であるA社に7億6千万円で譲渡した。A社は売買代金をPが指定した米国の金融機関の口座に送金した。この送金に当たって作成された送金依頼書の「受取人住所」欄には米国の住所が記入されていた。またPは、米国籍を取得しており、米国が発給したパスポートを用いて日本に出入国していた。

② 代金の支払日において住民票、印鑑登録証明書等の重要な公的書類のいずれにおいても、Pの住所として、売買した土地・建物の住所(日本国内)が記載されていた。

③ 土地に係る登記記録の全部事項証明書及び固定資産(土地)評価証明書には、土地の所有者であるPの住所として、旧住所(日本国内)が記載されており、建物に係る登記記録の全部事項証明書及び固定資産(家屋)評価証明書には、所有者であるPの住所として、売買した土地建物の所在地が記載されていた。

④ 国税当局は、売主Pは非居住者に該当し、不動産会社A社は源泉徴収義務を負うとして源泉所得税の納税告知処分を行ったのに対し、A社は、当該処分を不服として告知処分の取り消しを求めた事案である。

争点

この事案の争点は、「不動産の売主Pは非居住者に該当するか」「A社は、売主Pが非居住者であるか否かの調査確認を十分に行っていたか」である。

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