日本で勤務する外国人社員(非居住者)が給与の支払いを受ける場合、国内源泉所得に該当するため20.42%の課税を受けます。もし、この給与が国内で支払われる場合には源泉徴収(源泉分離課税)の対象となりますが、国外で支払われる場合には源泉徴収できないため、非居住者自ら確定申告しなければなりません。これを「172条申告」と呼んでいます。

【ケース1:海外の親会社から支払われる給与】

Xは、英国の親会社から日本子会社に本年4月に7カ月の予定で派遣されました。日本での勤務期間中の給与は全額英国の親会社から支払われます。Xは日本で申告する必要はあるでしょうか。なお、英国親会社は日本には支店等を有していません。

国内で職業に従事するため国内に居住することとなった者が、国内での滞在期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかである場合には、非居住者として扱われます。
このケースでは、Xの日本での滞在期間は7カ月の予定なので、非居住者として扱われます。

非居住者は、国内源泉所得のみが課税の対象となります。給与が国内源泉所得に該当するか否かは、勤務の場所が国内か国外かで判定します。もし、勤務の場所が国内であれば海外の法人から支払われるものであっても国内源泉所得となります。
Xが英国親会社から受け取る給与は日本での勤務に基づくものなので国内源泉所得に該当しますが、国外払いであり、かつ国内に英国親会社の支店等がないため、源泉徴収は行なわれません。

このような場合には、国内源泉所得である給与所得に対して分離課税の方法により確定申告(申告分離課税)を行い、税金を納付することになります。税率は20.42%で、給与所得控除は適用せず、収入金額に20.42%を乗して税額を算出します。

この申告は所得税法第172条に規定されていることから、「172条申告」と呼ばれています。
172条申告で用いる申告書の様式は最後に掲載しています。この申告書は、通常の確定申告書と違って、グロスの支払金額に20.42%を乗じて納付税額を計算する様式になっています。

非居住者が国内で勤務したことにより受け取る給与等(国内源泉所得)に対する課税は、次のようになります。
■給与等が国内で支払われる場合
→20.42%の源泉分離課税
■給与等が国外で払われ、支払者が国内に事務所等を有する場合
→20.42%の源泉分離課税・・・みなし国内払い
■給与等が国外で払われ、支払者が国内に事務所等を有しない場合
→20.42%の申告分離課税(172条申告)