くれぐれも「○育資金特例」や「○婚子育て特例」のような納税者をナメた制度を量産することはやめてほしいものだ。

高齢者が抱え込んでいる金融資産を若い世代に移し、
どんどん消費してもらって経済を活性化させよう——。
そんな狙いのもと、近年、贈与税の特例がわんさか出来ている。
教育資金贈与の特例しかり
結婚・子育て資金贈与の特例しかり
今ではすっかりお馴染みとなった相続時精算課税制度も
贈与者の年齢が今年から「60歳以上」となり
「祖父母から孫」への贈与も可能となって、適用範囲が大幅に拡大した。
私は、前者2つの特例(教育資金、結婚子育て)はインチキだと思っているので
唯一まともな相続時精算課税制度の進化に期待したい。
しかしそんな相続時精算課税制度も、
創設時はなかなかキワドい議論が展開していた。
ある日の政府税制調査会の基礎問題小委員会での一幕。
生前贈与を促すための優遇税制を「金持ち優遇」と指摘した委員に対し、
「例えば4千万円ぐらいの家を贈与したとしても資産家とはいえない」
「中流階級であり非常に多い世帯だ」と別の委員が対抗。
するとまた別の委員が「賃貸で一生過ごす人もいっぱいいるんだ」と切り返す。
説明のために用意されたモデルケースをめぐり緊迫の議論が続いた。
聞く人が聞いたらブチ切れそうな内容だが、委員たちは真剣そのもの。
すったもんだの末、相続時精算課税制度が誕生した。
金銭感覚の違いがクッキリ表れた議論は実に興味深かく
記者席の隅っこでワクワクしながら傍聴したのをよく覚えている。
若い世代に資産を移して景気を良くしていこうという考え方には賛成だ。
そうした趣旨の制度は今後も出てくるだろうけれど
丁寧な制度設計と、納税者への説明を徹底してほしい。
くれぐれも「○育資金特例」や「○婚子育て特例」のような
納税者をナメた制度を量産することはやめてほしいものだ。