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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:国税庁が国外財産調書の提出状況を公表 加算税5%加重は245件と増加

国税庁はこのほど「平成30年分の国外財産調書の提出状況」を公表しました。制度の導入から6年目の平成30年度は、提出件数は9,961件、財産の合計額は3兆8,965億円と前年より増加しました。一方で、税務調査により国外財産に係る申告漏れを指摘され、加算税の5%加重措置の適用を受けた件数は245件であり、こちらも前年より増加しました。

国外財産調書の提出状況

その年の12月31日において5,000万円を超える国外財産を保有する者は、翌年の3月15日までに当該国外財産の種類、数量及び価額等を記載した「国外財産調書」を提出しなければなりません。

国税庁はこのほど「平成30年分の国外財産調書の提出状況」を公表しました。

以下のグラフは過去6年間の提出件数と財産総額の推移を表したものです。提出件数、財産増額ともに年々増加しています。

 

【国外財産調書の提出件数と財産総額の推移】

(国税庁発表資料をもとに作成)

国税庁が公表したデータによると、国外財産調書の提出件数は9,961件(前年比4.3%増)、財産総額は3兆8,965億円(前年比6.3%増)となりました。

国税局ごとの状況を見ると、提出件数では東京局が6,413件で全体の64.1%を占めており、以下、大阪局が1,405件、名古屋局が719件の順となりました。

また、財産額では東京局が2兆8,458億円で全体の73%を占めました。富裕層が有する国外財産の約4分の3が東京局に集中していることが分かります。

財産の種類別の構成比では、有価証券が最も多く全体の52.5%を占め、次いで預貯金、建物、貸付金、土地の順となっています。

(国税庁発表資料をもとに作成)

加算税の加重・軽減措置の適用状況

国外財産調書には、適正な提出を確保するためのインセンティブ措置として加算税の軽減・加重措置が設けられています。

調書の提出がない場合又は提出された調書に記載のない国外財産に係る「所得税」の申告漏れが生じたときには、過少申告加算税・無申告加算税を5%上乗せされます。

一方で、提出された調書に記載された国外財産に係る「所得税・相続税」の申告漏れが生じたときには、同加算税が5%軽減されます。

平成30年度に行われた税務調査によって、加算税の加重・軽減措置が適用された件数、申告漏れ金額は以下の通りとなっています。

これによると、平成30年度では245件で加算税の加重措置の適用を受けており、前年の194件から大幅に増加しました。

国外財産調書の提出件数は年々増えていますが、5,000万円を超える国外財産を持っているのに調書を提出していない者もまだまだ多いということが浮き彫りとなっています。

国税庁では、CRS(共通報告基準)などを駆使して国外財産に関する情報の蓄積を着々と進めており、今後、国外資産を適正に申告しないことによる課税リスクは高まっていくものと思われます。

国外財産調書の不提出に対して全国で初の告発事案

平成30年度には、国外財産調書の提出を怠ったとして国外送金等調書法違反容疑で初めて刑事告発された事案がありました。

 

【告発事案の概要】

大阪国税局は、所得税約8,300万円を脱税し、海外の口座などに7,300万円の預金があったのに国外財産調書を提出しなかったとして、家具輸入販売仲介会社のN代表取締役を所得税法違反と国外送金等調書法違反の疑いで京都地検に告発しました。

Nは、他人名義の口座に売上代金を入金したり、他人名義で日本国内の家具業者と業務契約を結んだりして、約2億1500万円の所得を申告せず所得税を免れていました。脱税した金は他人名義の口座からNが現金で運び出し、日本国内の口座に預けていました。

さらに、売上の一部を入金していた香港の自身名義の口座などに約7300万円の預金があったものの、正当な理由なく国外財産調書を提出期限までに提出していませんでした。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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