今、そして未来に。高齢者の「住まい」が直面する課題とは

では、高齢者はどのような「住まい」の課題を抱えているのだろうか。
高齢化が進み、医療費の増大が国の財政に重く圧し掛かっている今、国は医療介護の中心を従来の病院から在宅へ転換し始めている。しかし、核家族化、少子化が進んだ現在、誰しもが子や孫と同居し、家族のケアを受けられる環境にはない。独居老人が増え、また、子も高齢化した結果の老老介護や、子が親の介護のために離職する介護離職なども問題となっている。
このような状況の中で、高齢者が安心して暮らせる「住まい」と「介護」を受けられるサービスは少ない。保険が適用される公的施設で、比較的安価な特別養護老人ホームは入居基準が厳しく、常に入居待ちの状態である。一方、高級有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は非常に高額で、入居できる高齢者はごく一部だ。
現在の医療介護の現場では、〝充実した「介護」サービスが受けられる低価格の「住まい」″が求められているのだ。

私達は、2012年から提供を開始した「ケアーズ訪問看護ステーション開業運営支援」の中で、こうした切実なニーズを目の当たりにしてきた。しかし、このニーズには訪問看護ステーションが提供するサービスだけでは応えることができない。
そこで新たに高齢者の「住まい」と「介護」とを組み合わせたビジネスの開業支援を開始した。年金の範囲で支払えるような低価格で、それでいて手厚い「介護」はもちろん、衣食住のすべてを揃えたサービスの開業を支援している。
この新たなビジネスを成功させるためには、医療介護事業者だけでは十分ではなく、公認会計士や税理士といった会計人の「知識」とそれをサポートする専門家の活躍に期待が高まる。

高齢者の「住まい」のビジネス化と、会計人の役割

低価格で提供される「住まい」+「介護」のサービスのニーズが高まっていることは、ご理解いただけたと思う。次は、こうした「住まい」のサービスをどのようにビジネス化するのかと、会計人の係わり方について考えていこう。

私達がこれまで開業や運営を支援してきた訪問看護ステーションと違い、「住まい」のサービスにおける投資額は大きいものとなる。これをすべて「経費」として考えてしまうと、なかなかこのビジネスを前向きに捉え、成功させることは難しくなる。
こうした「投資」では、より正確にその資産価値を理解する必要がある。投資対象としての「住まい」は「たな卸資産」ではなく「固定資産」となることは会計人には釈迦に説法であろう。しかし、医療介護の専門家が「住まい」の取得を「投資」と捉え、「固定資産」としてその価値を正しく理解しながら適切に運用することは、ことのほか難しい。そこで、会計人の活躍が期待されるのだ。

「たな卸資産」のように、短期間で実現損益がわからないため、「固定資産」として運用していく場合は長期的な予測をしながら、その価値を理解した上で適切な運用が必要となる。そうすることで、大きな利益を生み出すことができるのだ。
こうした視点で「住まい」を捉えるのは会計人の得意分野である。医療介護の専門家の中にはファイナンスの知識がないことで、取得可能な「固定資産」であるにもかかわらず、取得をあきらめ、チャンスを逃してしまう方もいる。「住まい」はイニシャルコストの負担も大きいが故に、適切な手法を知らないと、スタート時から失敗、あるいはスタートすら切れないというケースも珍しくない。

このように高齢者の「住まい」の価値を単なる住宅としてではなく、介護の現場で「固定資産」として運用することで、アービトラージ(裁定取引)を成立させることが、新たな会計人の役割となっていく。この収益性のインパクトは、会計人の方にしか見出せないだろう。
より多くの会計人が、こうした新たなビジネスチャンスを知り、チャレンジしてくれることを願う。

今回は投資の観点、特にアービトラージ(裁定取引)の観点から高齢者の「住まい」に関するビジネスと会計人の活躍の場について紹介した。
次回は、事業者の資金ではなく、同じ資金でも患者(利用者)の「ライフプラン」に注目した話を進める。相続、遺産、資金など、医療分野だけにとどまらない高齢者の抱える問題の実情と、そこで私達と一緒にそうした悩みの解決を目指す会計人について紹介したい。

どうぞお楽しみに!

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