捜索される物及び場所
捜索される物とは、滞納者又は滞納者の財産を持っている第三者が使用していると認められる金庫、貸金庫、たんす、書箱、かばん、戸棚、衣装ケース、封筒などがあります。
捜索される場所には、滞納者又は滞納者の財産を持っている第三者が使用していると認められる住居、事務所、営業所、工場、倉庫などがあります。
なお、解散した法人の清算事務が執られたとみられる清算人の住居も、捜索される場所に含まれます(昭和45.4.14東京高裁判決)。
貸金庫は、利用者と銀行との契約に基づくもので、鍵が二重に施錠されており銀行の協力がなければ解錠は困難ですが、銀行側は守秘義務を前提に協力をしない場合があります。
このため貸金庫については、滞納者が銀行等に対して有している貸金庫の内容物の一括引渡請求権を差し押さえられる場合があります(平成11.11.29最高裁判例)。
最高裁判例では、貸金庫の内容物について銀行は利用者と共同して民法上の占有を有すると判示した上で、利用者が有する銀行に対する貸金庫の内容物引渡請求権を差し押さえて、これを取り立てるという債権執行手続を認めました。
鍵の解錠
捜索に際して、鍵のかかっている金庫等を滞納者又は第三者が開けない場合や、不在のとき等やむを得ない場合には、器物の損壊等を必要最小限度にとどめたうえで徴収職員自らが鍵を壊して開ける場合があります。
また、解錠専門の鍵屋を呼んで開けることもあります。この場合の費用は「滞納処分費」として滞納金額に優先して国税に充てられます。
捜索の時間制限
捜索のできる時間は、日の出から日没までとなっています。ただし、日没前に着手した捜索は、日没後まで継続することができます。
日の出又は日没とは、太陽面の最上点が地平線上に見える時刻を標準とするものであって、その地方の暦の日の出入をいいます(明治34.10.7大審院判決、大正11.6.24大審院判決)。
また、特に必要であれば休日に捜索が行われる場合もあります。
捜索の立会人
捜索には適正を期するため、必ず次のいずれかの者の立会いが必要です(国税徴収法第144条)。
イ 滞納者の住居等を捜索する場合には、滞納者や滞納者の同居の親族で相当のわきまえのあるもの。または、滞納者の使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるもの。
【参考】 親族とは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいます(民法725条)。
ロ 第三者の住居等を捜索する場合には、捜索を受ける第三者やその第三者の同居の親族で相当のわきまえのあるもの。または、その第三者の使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるもの。
(注)「相当のわきまえのある」とは、捜索の立会いの趣旨を理解することのできる相当の能力を有していることをいい、成年に達した者であることは要しません。
ハ イ又はロに掲げる者が不在であるとき又は立会いに応じないときには、成年に達した者2人以上又は地方公共団体の職員若しくは警察官
捜索による時効への効力
捜索によって財産が差し押さえられた場合には、時効の完成猶予の効力が生じます。
なお、捜索によって差し押さえられる財産がなかった場合においても、その捜索が終了した時に時効の更新の効力が生じます。
捜索調書の作成及び交付
捜索を受けたときは、捜索の事績を明確にするために徴収職員が作成し署名押印した捜索調書の謄本が交付されます。
刑法との関係
捜索に際して、徴収職員に対して暴行又は脅迫を加えた者については、刑法第95条《公務執行妨害及び職務強要》の規定の適用があります。
出入禁止
徴収職員は、捜索、差押又は差押財産の搬出等の処分の執行のため支障があると認められるときは、これらの処分をする間は、その場所に出入りすることを禁止することができます。
ただし、滞納者、捜索を受けた第三者、同居の親族及び代理人に対しては、出入りを禁止することはできません(国税徴収法第145条)。
ここでいう代理人とは、滞納者から委任を受けた税理士、弁護士、納税管理人等又は法律の規定により定められた親権者、後見人、破産管財人等をいいます。
徴収職員の出入禁止命令に従わない者に対しては、扉を閉鎖する等必要な措置をとることができますが、身体の拘束はできません。
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