3つの簿記検定の比較

ここからは日商簿記・全経簿記・全商簿記という3つの簿記検定試験を比較していきます。

各検定の難易度と対象者

各種簿記検定試験の各級の主な対象者と難易度については以下のとおりです。

主な対象者 難易度(最新の合格率)
日商簿記試験 大学生・社会人 ・1級(12.5%)
・2級
統一試験(21.1%)
ネット試験(39.5%)
・3級
統一試験(34.0%)
ネット試験(42.3%)
・簿記初級(61.5%)
・原価計算初級(90.4%)
全経簿記試験 会計・税務の専門学生・社会人 ・上級(13.63%)
・1級(商業簿記・会計学)(36.36%)
・1級(原価計算・工業簿記)(64.82%)
・2級(商業簿記)(56.80%)
・2級(工業簿記)(74.31%)
・3級(70.32%)
・基礎(71.88%)
全商簿記試験 商業高校・商業科が設置された学科の学生 ・1級(会計)(38.5%)
・1級(原価計算)(42.6%)
・2級(57.6%)
・3級(76.7%)

試験内容と合格基準の違い

各種簿記検定試験の試験内容と合格基準には違いがありますので注意してください。

日商簿記

日商簿記試験の各級の試験内容は以下のとおりです。

1級
商業簿記
「商業簿記」は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
製造業で用いられる簿記で、製品の製造に要した金額(原価)の計算手続きについて出題されます。
会計学
工業簿記
「工業簿記」は、企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識です。
原価計算
2級
商業簿記 「商業簿記」は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
工業簿記 「工業簿記」は、企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識です。
3級 商業簿記 「商業簿記」は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。

全経簿記

全経簿記試験の各級の試験内容は以下のとおりです。

上級
商業簿記
・上場企業の経理担当者ないし会計専門職ならびに将来、税理士・公認会計士を目指す者として、最新の会計諸基準を理解し、これに基づく財務諸表を作成できる。また、会計数値の意味を理解し、経営管理者として会計情報を利用できる。
会計学
工業簿記
・製造・販売過程に係る原価の理論を理解したうえで、経理担当者ないし公認会計士を含む会計専門職を目指す者として、原価に関わる簿記を行い、損益計算書と貸借対照表を作成できる。また、製造・販売過程の責任者ないし上級管理者として、意思決定ならびに業績評価のための会計を運用できる。
原価計算
1級
商業簿記
(大規模株式会社)
・会社法における大会社の経理・財務担当者ないし経営管理者として、「大陸法」を含む複式簿記の仕組みに精通し、広く商業を前提とし、主たる営業活動のみならず、他業種にも適用できる財務活動、余裕資金の運用活動などの全般的な管理のための帳簿が作成できるとともに記録内容を理解でき、税金の処理ならびに決算整理を行い、損益計算書、貸借対照表、株主資本等変動計算書を作成できる。
・連結財務諸表については、会計人として、初歩的知識を保有する。 ・なお、小売・卸売業については、一部の特殊な商業慣行による商売の記録ないし把握にも対応できる能力も身につける。
会計学
1級
原価計算
(中小規模企業)
・製造業の経理担当者ないし管理者として、原価の意義や概念を理解したうえで、複式簿記に精通し、製造過程の帳簿を作成できるとともに、その内容を理解でき、製造原価報告書および製造業の損益計算書と貸借対照表を作成できる。また、作成した製造原価報告書と損益計算書を管理に利用できる能力を持つ。
工業簿記
2級
商業簿記 (中小規模企業)
・会社法による株式会社の仕組みの理解を前提として、中規模企業として位置付けられる株式会社の経理・財務担当者ないし経営者として、複式簿記の仕組みを理解し、小売・卸売業に止まらず他業種にも応用できる資本の調達・運用活動の管理のための帳簿を作成でき、その内容を理解できる。また、3級の営業費用に加え、収益費用勘定(名目勘定全般)の見越し繰延べを行う決算整理およびこれに伴う翌期の処理(再振替)ができ、これによる損益計算書と貸借対照表を作成できる。
工業簿記 (工業簿記の基礎)
・製造業における簿記の学習の導入部と位置付け、現場の経理担当者として、工程管理のための実際原価に基づく基本的な帳簿を作成でき、また、これらを管理する能力を持つ。
3級 商業簿記 (小規模株式会社)
・小規模企業として位置づけられる株式会社の経理担当者ないし管理者として、小売業や卸売業(商業)における管理のための基本的な帳簿を作成でき、かつ、照合機能を中心とした複式簿記の仕組みを理解し、家計と会社を分離する会計を認識し、会社の資産負債勘定(実体勘定)の基本的決算整理ならびに、営業費用の決算整理(簡単な見越し繰延べの処理)ができ、これによる損益計算書と貸借対照表を作成できる。
・商業つまり小売・卸売業の処理については、仕入活動と販売活動の側面を別個に把握する三分法による。なお、税抜き方式の消費税の処理も行える。
基礎簿記会計 (簿記会計学の基本的素養が必要な営利・非営利組織)
・簿記会計学の導入部と位置付け、会計に関わる者(経理事務担当者)として、組織管理のための基本的な帳簿を作成できる。さらに、複式簿記の原理と仕組みが理解でき、決算整理のない損益計算書と貸借対照表または会計報告書を作成できる。
・簿記の基本的仕組みが必要な組織とは、営利組織に止まらず広く、例えば、各種サークルや管理組合などの非営利組織をも指す。
・企業として取り上げる営利業種は、個人で経営する事業で、身近な(営業収益(給付)と営業費用(費消)が対応する)サービス産業全般(例えば、美容・理容業や小規模飲食業など)も対象とする。

各級とも1科目あたり70点以上が合格となります。

ただし、上級は各科目の得点が40点以上(全4科目の合計得点が280点以上)で合格です。

全商簿記の試験内容

全商簿記試験の各級の試験内容は以下のとおりです。

1級
会計 株式会社の会計処理を中心に会計法規や企業の業績測定等に関する内容も出題されます。
原価計算 製造業で用いられる簿記で、製品の製造に要した金額(原価)の計算手続きについて出題されます。
2級 商品売買業を営む個人企業の発展的な会計処理と、株式会社の基本的な会計処理について出題されます。
3級 商品売買業を営む個人企業の基礎・基本となる会計処理について出題されます。

全商簿記検定に合格するためには、各級とも70点以上を獲得する必要があります。

ただし、1級は各科目とも70点以上でなければなりません。

これを下回ると不合格となります。

取得後の活用シーンとキャリアパス

各種簿記検定試験に合格すれば、その資格を以下のように進学・就職・転職時に活用可能です。

日商簿記
活用シーン 日商簿記の資格は、日本のビジネスシーンでの基本的な簿記知識を証明するものとして広く認知されています。具体的には、中小企業や商店での経理業務、税理士や公認会計士のアシスタントとしての業務、または大手企業の経理部門での初級職としての活動などが考えられます。
キャリアパス 日商簿記の資格を持つことで、経理や財務の専門職への道が開かれます。特に、上級資格を取得することで、経理マネージャーや財務マネージャーとしての昇進のチャンスが増えるでしょう。また、税理士や公認会計士の資格を目指すステップとしても利用されます。
全経簿記
活用シーン 全経簿記は、実務的な簿記能力を証明する資格として位置づけられています。この資格を持つことで、実際のビジネスシーンでの帳簿の取り扱いや、財務諸表の作成などの業務を担当することが期待されます。特に、中規模以上の企業での経理業務や、経営コンサルタントとしてのアドバイザリー業務などでの活用が考えられます。
キャリアパス 全経簿記の資格を持つ者は、経理や財務の専門家としてのキャリアを追求することができます。また、経営戦略やビジネスプランニングの分野での活躍も期待され、経営コンサルタントやファイナンシャルプランナーとしてのキャリアも視野に入れることができます。
全商簿記
活用シーン 全商簿記は、商業分野での簿記の基本的な知識や技能を証明するものとして位置づけられています。小売業やサービス業などの商業分野での経理業務や、商業高校の教員としての活動などが考えられます。
キャリアパス 全商簿記の資格を持つ者は、商業分野での経理や財務の専門家としてのキャリアを追求することができます。また、商業教育の分野での教員や講師としてのキャリアも視野に入れることができ、商業高校や専門学校での教育職としての活動も期待されます。

簿記検定の学習方法と受験のポイント

簿記検定は会計の基礎知識や技能を評価する試験として、多くの受験者が挑戦しています。成功するためには、効果的な学習方法と受験のポイントを把握することが不可欠です。

効果的な学習リソースと教材

簿記検定の学習を始める場合は、以下をおさえておくことが大切です。

公式教材の活用

簿記検定の公式教材は、試験範囲や内容を正確に把握するための最も信頼性の高い教材です。

例えば、日商簿記の公式テキストは、試験の出題範囲や形式に合わせて構成されています。

各検定試験のホームページには、おすすめのテキストが紹介されています。

そのなかから、自分に合ったものを選ぶようにすると良いでしょう。

簿記検定に合格するためのポイントとしては、問題演習量を増やすことです。

したがって、教材を選ぶ際には、問題演習量が確保できるものを選ぶと良いでしょう。

模擬試験

実際の試験形式に慣れるために、模擬試験を定期的に受験することが推奨されます。

例として、全経簿記の模擬試験は、実際の試験と同じ時間制限や問題数で実施されるため、非常に効果的です。

日商簿記など受験者の多い試験については、専門学校が模擬試験を実施しています。

専門学校主催の模擬試験でなくとも、模擬試験用として販売されている問題集があるため、試験直前の力試しとして活用すると良いでしょう。

オンラインリソース

オンライン上には、簿記に関する多くの学習リソースや教材が提供されています。

例えば、YouTubeには簿記の基礎から応用までを解説する動画講座が数多く存在します。

また、特定の論点について、解説したブログなども積極的に活用すべきです。

簿記試験は、長年の歴史がある分、すでにオンライン上に様々なリソースがあります。

もちろん、正しい情報ばかりではないので、公式教材を活用しつつ、オンラインリソースを補助的に活用すると、勉強の効率が格段に高まるでしょう。

受験の際の注意点と対策

実際に試験に臨む場合には、以下のポイントに注意してください。

簿記検定試験はこれまでの積み重ねを発揮する場です。

前日、当日にできることは限られています。

したがって、実力を発揮できるように当日は準備することが大切です。

時間管理

試験時間は限られているため、効率的な時間管理が必要です。

例えば、全商簿記の試験では、計算問題に多くの時間を割くことが求められるため、事前の練習で時間配分を習得することが大切です。

基本の確認

簿記の基本的な概念や原則をしっかりと理解しておくことは、試験の成功にとって不可欠です。

各論点の仕訳がどんな簿記試験においても基礎になりますから、直前には仕訳も確認しておきましょう。

心構え

試験当日は、冷静な心構えで臨むことが大切です。

過度な緊張や焦りは、ミスの原因となることがあるため、リラックスして問題に取り組むことが推奨されます。

持ち物の確認

試験会場に持ち込むことが許可されているものと、禁止されているものを事前に確認し、必要なものを忘れずに持参することが重要です。

例えば、電卓や筆記用具、受験票などの確認は必須です。

電卓については、カチカチと音がするものを選ぶと周りに迷惑となる場合があるので注意してください。

静音機能を有した電卓の利用がおすすめです。

簿記検定試験に利用できる電卓は限定されているので、持ち込みができるかどうか十分に確認してください。

総じて、簿記検定を成功させるためには、効果的な学習リソースの活用と、受験の際の注意点や対策をしっかりと把握しておくことが必要です。

これらのポイントを踏まえて、試験に臨むことで、より高い成果を得ることができるでしょう。

まとめ

日商簿記、全経簿記、全商簿記の3つの主要な簿記検定を徹底的に比較しました。

日商簿記は日本のビジネスシーンでの基本的な簿記知識を証明する資格として広く認知されており、中小企業や大手企業での経理業務に適しています。

全経簿記は実務的な簿記能力を評価する資格で、中規模以上の企業や経営コンサルタントとしての活動に役立ちます。

全商簿記は商業分野での簿記の基本的な知識や技能を証明する資格で、商業高校の教員や小売業の経理業務に適しています。

それぞれの簿記検定には独自の特徴と活用シーンがあり、自身のキャリアや目的に合わせて選択することが重要です。


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