ビジネスの目標達成に欠かせないと広く認識されている「KPI」ですが、管理部門がどのように活用すべきかはあまり語られていません。データ統合による企業の全体最適をかなえるKPI活用の本質について、株式会社Scale Cloudの代表取締役で、これまで800社以上の企業を支援してきた公認会計士・税理士の広瀬好伸氏が3回にわたり解説します。
この記事の目次

広瀬好伸
1979年兵庫県生まれ、公認会計士・税理士。京都大学卒業後、あずさ監査法人に入社し、公認会計士として従事。2007年に起業し、CFO/IPO/会計/税務/M&A/企業再生などのコンサルタントとして800社以上の経営を支援する。4社のIPOに携わり、そのうち2社(株式会社i-plug、株式会社NATTY SWANKYホールディングス)の社外役員を務める。予算管理とKPI管理を一元化することで、予算達成プロセスを変革し、予算の達成度とその再現性を高める経営管理システム「Scale Cloud」を開発・提供。
近年、急速な広がりを見せている「KPI」。
KPIの開示を行っていない上場企業はないでしょうし、上場を目指すスタートアップ企業でも必須のものとなっています。
しかし、「KPIって事業部が管理するものでしょ?」と思っている管理部の方も多いかもしれません。
確かに基本的にはそうですが、管理部としてもKPIを活用して、事業全体の状況を把握し、予算の達成に導いていくことが大切です。
今回は、全3回の連載記事として「管理部がどのようにKPIを活用するべきか」について書き進めていきます。
数値活用のレベルの違い
突然ですが質問です。
経営する上で数値は大切だと思いますか?
「No」という人はいないと思いますが、数値活用のレベルには差があると思います。
経営に登場する主な数値としては、財務数値と非財務数値があり、それらの特長をまとめると次のようになります。

これを踏まえて、数値活用のレベルの違いを考えてみます。
Lv.1 会計データを活用
月次試算表(BSやPL)をもとに、月に1回、ビジネスの状況を把握し、意思決定をし、アクションをしているという状況です。
これには次の3つのデメリットがあります。
- 結果論であるということ
- 結果の分析もわかりにくい
- ほとんどの人が読めない
Lv.2 部分最適にKPIデータを活用
KPIを活用すれば、Lv.1のデメリットは解消されます。
例えば、営業部ではSFA(営業支援システム)、マーケティング部ではMA(マーケティングオートメーションシステム)やGA(Google Analytics)、カスタマーサクセス部ではCRM(顧客管理システム)、その他のチームではスプレッドシートやExcel、というように部門ごとに必要な機能(ファンクション)が最適化されたシステムを活用して、部門ごとにKPIを活用します。
これによって、個別業務のマネジメントがより詳細かつスピーディーにできるようになります。
しかし次に訪れるのが、サイロ化によってセクショナリズムが発生して部分最適なマネジメントになってしまっているという問題です。
Lv.3 全体最適にKPIデータを活用
部門ごとでバラバラに管理しているKPIを表計算ソフトに集約して、事業全体を俯瞰(ふかん)して見られるようにします。
マーケティング → 営業 → カスタマーサクセスというビジネス・プロセスの一連におけるポイントを、KPIで可視化して、事業全体の状況が誰でもパッと見てわかるようにできるようにします。
そうすることで、事業全体を横断的に全体最適なマネジメントがしやすくなります。
Lv.4 会計データとKPIデータを統合して活用
一方で、会計データ(財務情報)も重要です。
ファイナンスや株主報告といった点では必須のものになりますし、また、業績目標や予算もPLベースで立てられることが多いでしょう。
そこで、Lv.3で表計算ソフトに集約した事業横断的なKPIデータと、業績目標や予算といったPL目標、またはBS改善の具体的な目標とを結びつけて一元管理します。
データのサイロ化からボーダレス化へ
「一元管理をする」といいましたが、そう簡単な話ではありません。
現実的には、各部門ごとにバラバラにデータ管理をしていることが多いものです。
先ほど書いたように、例えばマーケティングチームはGAやMAを使って、セッション数、CVR、CPAといったKPIを管理していますし、セールスチームはSFAやCRMを使って、商談数、成約率、1人あたり契約数といったKPIを管理していて、コーポレートチームが会計システムや予実管理システムを使って財務データを管理しているといった具合です。

このようにデータのサイロ化やセクショナリズムが進むと、縦割りマネジメントになるので、横串を通してクロス・ファンクショナルにマネジメントする必要があります。
そこで登場するのがKPIです。組織におけるサイロ化やセクショナリズムといった「分断」を解消してボーダレス化し、クロス・ファンクショナルに全体最適にマネジメントする有効な手法になります。
KPIのそもそもの目的は?
「どのようなKPIを設定すればいいのか?」
「どのように運用していけばいいのか?」
このような疑問に対して、ノウハウが世の中的にも確立されていないので、手探り状態になっている会社は多いものです。
そもそも、KPIを活用する目的は何でしょうか?
本題の前に、あらためてまずはKGIとKPIの定義とその関係を整理してみます。
- KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標) :
最終的に達成したい目標(ゴール)を定量的に評価するための指標
- KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標) :
最終目標に至るまでのプロセスが適切に実行されているかどうか、その途中経過の達成状況を定量的にチェックするための指標

つまり、KGIという最終目標(ゴール)までの道のりの途中にある中間地点(チェックポイント)にあたるものがKPIです。
このように整理すると、KPIを活用する主な目的は、一般的には「KGIの達成」となります。
では、 KGIを達成する目的とは何でしょうか?
KGIを達成する目的は、個人・部門・会社全体の視点によって異なりますが、特に会社全体で考える場合は、一般的には「事業計画や予算の達成」がその目的になります。

営業部門であればKGIは「売上」かもしれませんし、マーケティング部門であれば「有効リード数」、採用部門であれば「採用人数」かもしれません。
一方、事業部全体や会社全体であればKGIは「売上」や「利益」になることが多いでしょう。
KGIが決まったら、それを達成するためのKPIを設計します。
この設計においては「KPIツリー」をつくるといいでしょう。
次回の記事では、この「KPIツリー」のつくり方について書いていきます。
さいごに
KPI式PDCA: 数値化で事業成長する仕組み
広瀬好伸
実生社・発売日:2022/12
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784910686059
『KPI式PDCA:数値化で事業成長する仕組み』という本を出しています。
今回の連載で書いたことをより詳しく、KPIという数値を活用して、ロジカルに、スピーディーに、組織的にPDCAをまわし、予実管理の精度を高めていく仕組みを書いています。
事業目標を達成するための仕組み、さらに、その目標達成を一時的なもので終わらせるのではなく、継続的に達成し続けることができる仕組みづくりを、具体的に実践することにこだわって書いていますので、少しでもみなさまの事業のお役に立てれば幸いです。
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