相続や事業承継の現場で、美術品の取り扱いに悩む税理士・会計士は少なくありません。バブル期に購入された絵画が相続財産として現れるケースが増えるなか、専門鑑定の重要性は高まっています。今回は、ご自身もアーティストであり、美術品鑑定・売買を手掛ける株式会社Amalgam代表の梅原和宏氏に、依頼増加の背景、専門鑑定の価値、そして現場ならではのエピソードを交えて、税理士が知っておくべきポイントを伺いました。

この記事の目次

梅原和宏氏の顔写真

梅原和宏

株式会社Amalgam 代表取締役
1993年 奈良県大和郡山市生まれ

同志社大学神学部中退後、英ブリストルに留学。
帰国後、祖父の会社であるミカサスポーツに入社。野球グラブ職人として修行。
コロナを機にアーティスト活動を本格化。1950〜70年のニューヨーク派で抽象表現は終わったのか?を問いとし、抽象(非具象)を感覚的非具象=オートマティズムの対となる理性的非具象=アンチ・オートマティズムをコンセプトに作品を制作している。

美術品鑑定依頼が増える背景 ── バブル期購入作品が相続財産に

梅原和宏(以下、梅原):ここ数年、美術品鑑定の依頼は確実に増えています。
一番日本に絵が入ってきたのは、バブル崩壊前の1980年代から90年代頭ぐらい。当時、日本人はよく絵を買っていました。
その頃に購入した方々は当時40代くらい。いまでは80代、90代になっていて、お亡くなりになる方も増えていて、亡くなった後に相続案件になるケースが非常に多いんです。これからも増えると思います。

日本のアート市場における総売り上げの推移

Arts Economics(2024)のグラフを元に作成

■高額な海外の絵画購入がニュースになっていた時期がありましたね。鑑定は海外作品が多いのですか?

梅原:依頼は、数としては日本の美術品が多いですが、単価が高いのは海外作品です。
アンディ・ウォーホルやキース・ヘリング、シャガール、ルノワールなどは、数億円になることもあります。一方、日本人作家は草間彌生さんや奈良美智さんを除けば、版画で数万円、絵画でも数百万円程度が一般的です。

■その頃の絵画が相続の対象になっているのですね。

梅原:いわゆる昔の邸宅には豪華なじゅうたんが敷かれ、装飾の強い家具が置かれ、立派な額縁の重厚な絵が飾ってあるんですよ。中世ヨーロッパのようなイメージ。
ところがいまのマンションや邸宅にはその絵が全然合わず、せっかく相続をしても飾る場所がない。そういう理由で売却を考える方も多いですね。
絵画にも流行というものがありますから。

■では、鑑定の依頼はやはり絵画をお持ちの方が亡くなった後でしょうか。

梅原:そうです。ほとんどが亡くなった後です。
相続税の申告には10ヶ月という期限があります。手続きを税理士さんに依頼して進める過程で、絵画をはじめとする美術品が出てきて、どうしようと税理士さんから相談が来ます。
生前の場合は、むしろ相続対策として絵を買う方が多いんです。いま持っているものを売るというより、資産として絵を増やす動きですね。

■個人だけでなく法人からの依頼、事業承継の場面でも依頼があると聞きました。

梅原:会社で絵を買っているケースは結構ありますよ。
事業承継を進めていく途中、資産を評価するタイミングで「この絵はどうする?」という話になってきます。担当している税理士さんは事業承継そのものについては提案できると思いますが、絵画については専門外ということで依頼をいただきます。

専門鑑定の重要性 ── 評価額に大きな差が出る理由

■相続や事業承継のプロであっても、美術品鑑定は専門外。どこに鑑定を依頼するかも重要ですね。

梅原:専門家に頼むかどうかで、評価額は大きく変わります。
僕なら500万円で買える絵を、他社では200万円と言われていたケースがあります。倍以上の差が出ることも珍しくないです。

■そんなに差が出るのですか?

梅原:「鑑定」といっても、その品の専門かどうかという問題があります。
相続税の申告で期限のあるなか、慌てて街中のいわゆる買取ショップに絵を持っていっても、「100万円ならいいよ」のような感じになってしまう。
専門外の品だということもありますが、買取ショップの場合、その後に売却することを前提に評価するので、“売れる値段”をつけることになります。
どうしても安くなりますよね。高すぎると売れず、損をしてしまう。
買取ショップの看板に「鑑定」と書かれていても、本音ではやりたくないでしょうし、やるなら安く買うしかない。

■なるほど、そういった事情が。

梅原:一方、専門業者であればまず正確な評価ができます。加えて、高額な品であっても専門の販売ルートも持っています。
プライベートセールで直接売却することもあるので、比較的高めに買い取れる自信があります。顧客から「いい絵があったら声をかけて」と言われることも多いんです。
売却額をおさえるために安く評価するということがないので、売り手にとっても有利です。

専門家を見分けるポイント ── 絵画・骨董・ジュエリーの違い

梅原:専門家を選ぶときは、まずその分野に特化しているかどうかが重要です。

■美術品といってもひとくくりにはできないのですね。

梅原:絵画なら絵画の専門家に頼むべきです。
うちの場合は、まず僕がオークションハウス出身で、役員には元三越美術部の人間がいます。この組み合わせでしっかり評価できるのが強みです。
骨董やジュエリーなどもワンストップで対応可能です。ペルシャじゅうたんや日本刀の相談もありますよ。
昔の刀は偽物も多くて、正直なところ個人的には乗り気ではないのですが(笑)。名前だけ『正宗』と入っているものとかがあり、そういうものを見抜くのも専門家でないと難しいですね。

■専門家としての強みはほかにもありますか?

梅原:絵画をお持ちの方は数多く収集していることがあるのですが、実は値段のつかないものもあるんです。30枚あったら3枚しか値段がつかないケースもありますが、すべてまとめて引き取ります。
相続のタイミングでもありますし、寄り添うサービスを心がけています。
買い取り後も関係が続くこともありますよ。先日は、絵画をお持ちだった地方の地主さんが東京にいらっしゃったタイミングで食事に行きました。そうした付き合いが続くのは、珍しいことだと思います。

税理士へメッセージ ── 困ったときに備えるネットワークの価値

梅原:相続や事業承継の際、税理士さんは美術品の評価に困ることが多いと思います。
申告期限がありますし、不動産や株など、評価しなければならない資産はほかにもあるでしょう。
いざというときにネットで探すより、専門家とつながっておくことが大事です。
査定だけでも構いませんし、カジュアルに相談してください。僕らは全国どこでも伺いますので。

■全国!地方も多いのですか?

梅原:つい最近も、車で3時間かけて長野の奥まで行きました。全国津々浦々、あちこちまわっています。
地方は家が広いので、絵が多い傾向にあるんですよ。壁一面に絵が飾られていることもあります。

■鑑定依頼が増えているとのことですから、備えておきたいですね。

梅原:美術品は、相続や事業承継の現場で突然出てくることがあります。
大手の税理士法人との提携も進んでいますが、まずはAmalgamを知っていただき、困ったときに思い出してもらえたらうれしいです。

株式会社Amalgam
https://amalgamgallery.com/

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