設計を機能させるための土台
ここまで、会計を起点に業務プロセスを設計し直すことの意義を見てきました。
しかし、プロセスを変えるには、設計が現場で実際に使われていなければなりません。
設計の重要性を理解していても、それが十分に生かされないことがあります。
その理由は主に2つあります。
1つは、設計を作った時点で安心してしまい、日常の処理に追われるうちに、作成した資料を誰も開かなくなってしまうこと。
もう1つは、業務を回した結果気づいた点があっても、それを設計に反映する場が設けられていないことです。
こうした状態が続くと、設計は「業務フロー図」などの資料に止まり、日々の業務のなかで参照も更新もされなくなります。
システム導入時に作成したフロー図が、半年後には実態とまったく異なるものになっていた、というケースは珍しくありません。
重要なのは、設計して終わりにしないことです。
実務を回すなかで生じた違和感やエラーを、その場限りで処理するのではなく、後から振り返り、設計にフィードバックする。
この循環がなければ設計は形骸化します。
締め切りに追われる現場では処理を止めることはできません。
だからこそ、定期的に立ち止まり、設計を見直す機会を持つことが重要です。
拙著『業務設計の教科書』で紹介した業務定義シートや業務の地図のようなフォーマットを活用することで、業務の流れや判断基準を共有するための共通言語が生まれ、ボトルネックや例外対応の発生箇所を客観的に捉えられるようになります。
ただし、本当に重要なのは「描くこと」ではなく「回すこと」です。
業務を回した結果を持ち寄り、どこでズレが生じたのかを振り返り、その内容を設計に反映させる。
この往復があってはじめて、設計は現場に根付きます。
日々の小さな違和感は、設計を磨くための材料です。
それを個人の経験で終わらせず、共有し、設計に戻す。この姿勢こそが、設計を生きたものにします。
結果を変えるには、プロセスを変えるしかない
生成AIの広がりによって、会計の周辺業務は確実に変わります。
しかし、それは会計人の価値がなくなるという意味ではありません。
既存のシステムは定義されたルールのもとで正確に処理することを得意としてきました。
生成AIはそこに柔軟さを加えますが、設計が曖昧であれば、問題もまた曖昧なまま拡大します。
今回見てきたのは、会計の本質が「処理」ではなく「判断」にあり、その判断を支えるのが「設計」であるという点です。
そしてもう1つ重要なのは、結果を変えるためには、プロセスを変えるしかないということです。
月次決算に時間がかかる企業には、業務の滞留、差し戻しの多発、何往復もする確認作業などの問題が生じています。
こうした状態を解消するために、自動化を試みても効果は限定的です。
そのプロセスを整え、見直し、回し続けることに会計人が関わることには、大きな意味があります。
すべてを担う必要はありません。
しかし、最終的に数値が集まる立場だからこそ、どの工程がボトルネックになっているのか、どこに設計上のゆがみがあるのかに気づくことができます。
AI時代に問われるのは、処理の速さそのものではなく、プロセスをどう設計し、どう改善し続けるかという視点です。
設計が整ってはじめて、AIやソフトウェアは安定して機能します。
次回は、そのプロセスをどう「測る」のかを考えます。
業務と会計数値を接続する「業務KPI」という視点から、設計を改善につなげる方法を整理していきます。
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