生成AIを税理士の業務プロセスにいかに落とし込むか。今回の会計人ライブラリーは、そのヒントが詰まった書籍『これならできる!税理士のための生成AI活用アイディア23選』について、大野修平公認会計士・税理士に聞きました。

大野修平公認会計士・税理士の著書書影

これならできる!税理士のための生成AI活用アイディア23選
~業務ですぐに使えるプロンプトから、工夫・応用のためのヒントまで~
大野修平 著
第一法規株式会社
発売日:2026/3/9
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著者が語る書籍の見どころ

生成AIの普及により、税理士の役割や会計事務所の業務は大きく変わってきています。
セブンセンス税理士法人の大野修平公認会計士・税理士による初の著書、『これならできる!税理士のための生成AI活用アイディア23選』はその道しるべとなる書籍です。
今回は大野氏に、生成AIとの向き合い方や実務での活用方、ツールの選び方などについて話を伺いました。

Q. 『これならできる!税理士のための生成AI活用アイディア23選』について、ご紹介ください。

A. 本書は、税理士をはじめとする会計事務所の現場で「明日からすぐに使える」生成AI活用の入口となることを目指してまとめた一冊です。文章作成、文章要約、データ作成、データ分析といった日常業務のシーンごとに、合計23のアイディアを具体的なプロンプト例とあわせて紹介しています。

生成AIに関する書籍は数多く出ていますが、税理士業務の文脈に沿って、しかも「初めて触る方でも再現できる粒度」で解説したものはまだ多くありません。
本書では、難しい理屈よりも、まず手を動かして体感していただくことを優先しました。本文では多数のノウハウを紹介し、注釈の中には、進化の速い生成AIと向き合ううえで本質的に大事にしてほしい考え方を散りばめています。読み終えた頃には、「自分の事務所のあの業務でも試せそうだ」というイメージを持っていただけるはずです。

Q. 大野先生のSNS(X)に「進化の早い生成AIについて、書籍というリードタイムの長いフォーマットで解説をするという、無謀に思えることにチャレンジしています」とありました。工夫されたことを教えてください。

A. 生成AIの進化スピードに対して、書籍というフォーマットはどうしてもリードタイムが長く、原稿を書いている最中にも新しいモデルや機能が次々と出てきます。そこでいちばん工夫したのは、「賞味期限の長い部分」と「いまこの瞬間のスナップショット」を意識的に書き分けたことです。

具体的には、本文ではなるべく特定のモデル名や最新機能に依存しすぎないよう、業務シーンごとの考え方とプロンプト設計の型を中心に据えました。一方で、注釈をふんだんに入れて、そこに本音を詰め込んでいます。「本当はここまで踏み込んで使ってほしい」「このやり方はおそらく半年後には変わっているはずだが、本質はこうだ」といった、ライブ感のあるコメントは注釈側に寄せた形です。

もう一つは、「読者が自分で考え続けられるようにする」ことです。書籍が出た瞬間に情報が古くなるのは避けられないので、答えを与えるよりも、読者ご自身が新しいツールが出てきたときに応用できる視点を残すことを意識しました。

Q. すでに生成AIを取り入れている、これから必要と考えている、二の足を踏んでいる先生など、スタンスはさまざまだと思います。大野先生は、会計事務所と生成AIの向き合い方についてどうお考えですか?

A. 率直に申し上げると、二の足を踏んでいては取り残されてしまう、という危機感を強く持っています。もはや「生成AIが使える事務所か、使えない事務所か」を議論している段階ではなく、生成AIを使うことを大前提として、それをどう自分たちの業務プロセスに落とし込むかを考えるフェーズに入っていると感じています。

もちろん、いきなり全業務をAIに置き換えるべきだと言いたいわけではありません。税理士業務には、お客様との信頼関係の構築など、人が担い続けるべき部分が必ず残ります。ただし、その「人がやるべき仕事」に集中するためにこそ、これまで多くの時間を使ってきた部分を積極的に生成AIに任せていくべきだと考えています。

会計事務所は、データと文章を扱う仕事の塊です。これは生成AIと非常に相性が良い領域で、活用余地が大きい業種だとも言えます。「うちにはまだ早い」ではなく、「うちだからこそ早く取り入れる」という発想に切り替えていただきたいと思っています。

Q. 「文章作成」「文章要約」「データ作成」「データ分析」などに分かれていて、税理士でなくとも参考にしやすそうです。まだ仕事に生成AIを取り入れていない事務所が導入しやすい場面はありますか?

A. 書籍で取り上げた23のアイディアは、どれもいつでも取り掛かれる内容に絞っていますので、ぜひ全て試していただきたい、というのが本音です。

そのうえで、まず取り組みやすい場面を挙げるとすれば、「文章作成」と「文章要約」の領域だと思います。
例えば、お客様への定型的なご案内メール、社内向けの議事録、長い資料の要点整理などは、ミスをしてもリスクが比較的小さく、効果を実感しやすい業務です。ここで「思ったより使えるな」「自分の言葉に直すだけで十分使えるな」という成功体験を積んでいただくと、その後の本格的な活用に弾みがつきます。

逆に、いきなり税務判断そのものや、お客様に直接出すアウトプットの中核部分に使おうとすると、ハルシネーション(誤情報)のリスクが先に立ち、「やっぱり使えない」という結論になりがちです。
最初は「下書き作成」「ドラフトのたたき台」として位置づけて、必ず人がレビューして仕上げる、という運用から始めるのがおすすめです。

Q. 書籍ではChatGPTがベースとなっていますが、Gemini、Gensparkなどもどんどん発展していて、業界特化のものも出てきています。選び方のコツはありますか?

A. ツール選びについては、「正解は一つではない」というのが大前提です。そのうえで、私自身は自分の業務シーンごとに複数のツールを使い分けています。

コツとしては、まずChatGPTやGeminiなど、汎用的なツールを一つ使い込んでみることです。プロンプトの感覚は基本的に共通していますので、一つを深く触れば、別のツールに乗り換えるのも難しくありません。
そのうえで、リサーチに強いもの、コード生成に強いもの、エージェントとして使い勝手が良いものなど、目的別に追加していくとよいと思います。

最近私が注目しているのは、Claude Codeですね。会計事務所の業務でも、「ちょっとした集計を自動化したい」「定型的な処理をスクリプトにしたい」というニーズは意外と多く、こういった領域でかなり手応えを感じています。

新しいものが出るたびに飛びつく必要はありませんが、四半期に一度くらいは、自分が使っているツールが本当にベストかを見直すサイクルを持っておくと良いと思います。

Q. 先生ご自身が、これから生成AIでやってみたいことはありますか?

A. 税理士事務所業務のあらゆる場面に生成AIを組み込んでいきたい、というのが大きなテーマです。記帳代行や月次の定型業務はもちろん、もう一段踏み込んで、コンサルティング領域への活用を進めたいと考えています。

直近で特に手応えを感じているのは、財務デューデリジェンス(財務DD)や企業価値算定の分野です。膨大な資料の読み込み・要約、数値の整合性チェック、レポートのドラフト作成など、これまで担当者の経験と時間に大きく依存していた工程が、生成AIによって大きく効率化されつつあります。アウトプットの質もかなり高い水準まで来ています。

今後は、こうした高付加価値領域でのノウハウを社内に蓄積し、最終的には「生成AIを前提とした新しい税理士事務所のサービスモデル」を、自分たちの手で形にしていきたいと考えています。

Q. 先生が大事にされている、あるいは影響を受けた本とその理由を教えてください。

A. 一冊だけ挙げるのは難しいのですが、私自身が定期的に読み返しているのは、みなもと太郎さんの「風雲児たち」という漫画です。幕末とそこに至るまでの江戸時代を面白くもシリアスに描いた漫画で、画風が古いのがネックですが、多くの方に読んでもらいたい本です。

私が所属するセブンセンス税理士法人は、「チャレンジing×チェンジing」をグループ理念としているのですが、幕末はまさにチャレンジとチェンジの連続です。当時に比べれば現代のビジネス環境なんてイージーすぎるので、ビジネスパーソンも多くの勇気がもらえる漫画です。彼らの志や信念に触れることで多くの学びがあります。

会計や税務の専門書はもちろん大切ですが、専門知識だけでは差別化が難しい時代になりました。だからこそ、「自分はどんな価値を、誰に、どう届けたいのか」を考えさせてくれる本に、繰り返し立ち返るようにしています。
生成AIの活用を考えるうえでも、「AIに何をさせるか」より前に、「自分は何をしたい人間か」がはっきりしていることが、結局はいちばんのレバレッジになると感じています。

Q. 告知や今後の予定があればお知らせください。

A. 現在は、税理士事務所向けの会員組織『AI研究会』の総合ディレクターとして、生成AIの実務活用や、これからの税理士像をテーマにした勉強会・セミナーを継続的に開催しています。会員の先生方と一緒に、現場のリアルな課題を持ち寄りながら検証していますので、ご関心のある先生はぜひ覗いてみていただければうれしいです。

書籍出版に伴って、各地の税理士会に講演で呼んでいただくことも増えましたし、刊行記念イベントも企画中です。最新の情報は、私のX(旧Twitter)やAI研究会で随時お知らせしてまいりますので、ぜひフォローいただけますと幸いです。

著者紹介
大野修平公認会計士・税理士の画像

大野修平
公認会計士・税理士
セブンセンス税理士法人 ディレクター

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
​トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験を持つ。
また、スタートアップ企業の育成・支援にも力をいれており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。
生成AIの活用や今後の税理士像を探求する税理士事務所向けの会員組織である『AI研究会』の総合ディレクターを務めるなど、生成AIへの造詣も深い。

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