突然やってくる相続・・・。悲しみも癒えぬ間に、遺品整理から遺産分割協議を始めとする他の相続人との調整、名義変更手続きなど諸々の不慣れな課題に対応していかなくてはなりません。人生においてそう多く経験するものではありませんが、いざというときのために基礎知識は身に付けておきたいものです。ここでは最低限知っておきたい相続発生時のイロハをご紹介いたします。
まずは戸籍謄本のチェック
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亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を取り寄せ、相続人を確認しましょう。
相続人の中に、「名前を聞いたことすらない養子がいた!」「被相続人が認知している子供がいた!」という話も珍しいことではありません。
戸籍謄本は、住民票と異なり、本籍地での取得となります。現在の本籍地がわからない場合には本籍地が記載された住民票を取得してみましょう。
本籍地を複数回移動している場合には、その全ての本籍地に対して請求を行うことになります。
本籍地移動の履歴が不明の場合には、現在の本籍地の戸籍謄本を取り寄せ、転入元(以前の本籍地)を確認します。これの繰り返しで出生時の本籍地まで遡ることが可能です。
遠隔地の場合、郵送での請求も可能ですが、手続きについては各自治体で異なります。
なお、兄弟姉妹の相続では、異母・異父兄弟の存在を確認するため、亡くなったご本人の出生から死亡までの戸籍謄本のほか、亡父母の出生から死亡までの戸籍謄本の取得が必要になります。
集めた戸籍謄本の束は、各種名義変更から相続申告など、様々な場面で必要となります。
名義変更をすべき金融機関や不動産の数が多い場合は、今年5月にスタートした「法定相続情報証明制度」を利用して、登記所に「法定相続情報一覧図」の申し出をすれば、従来のように各種相続手続きの場面で戸籍の束を何度も出し直す手間が省けます。
遺言書を発見したら
表紙に「公正遺言証書」と書いてあるものは、その場で開封OKです。公正遺言証書は被相続人が公証人役場で公証人に作成してもらった遺言書であり、原本は公証人が保管していますので偽造・変造の余地はありません。
「公正遺言証書」以外で封がされている遺言書を発見した場合には、すぐに家庭裁判所に提出し、「検認」の請求をしましょう。
検認とは、全ての相続人に遺言書の存在と内容を知らしめ、遺言書の偽造・変造を防止する手続きです。遺言書の内容に対する有効・無効の判断ではないため、それについては検認後、別途で異議申し立てが必要になります。
遺言書を家庭裁判所以外で開封したり、検認を経ないまま遺言を執行したりした場合、遺言自体は無効になりませんが、行政罰として5万円以下の過料に処せられます。
なお、遺言書を偽造、変造、破棄や隠匿した人は、相続欠格者となり相続人としての権利を失います。
遺産を相続するのか放棄するのか
相続は、不動産や金融資産などのプラスの財産だけでなく、借金や連帯保証人としての地位などマイナスの財産も承継します。プラスの財産のみを相続することはできません。
借金などのマイナスの財産の方が多い場合には、相続自体の放棄を検討する必要があります。
ここで注意したいのが、表面上は借金に見えても、潜在的にはプラスの財産となるものです。
まず、住宅ローンはほとんどの場合、団体信用生命保険への加入が義務づけられているため、加入者が死亡または高度障害に陥った場合、生命保険会社から保険金が支払われ、残債はチャラになります。アパートローンでも団体信用生命保険に加入しているケースがありますのでご確認を。
また、消費者金融からの借金がある場合、貸金業法が改正された2007年以前の借金は過払い返還請求により、残債がゼロになるどころか払いすぎた利息が戻ってくる可能性があります。
過払い金や過払い金請求の権利も相続財産となりますので、相続放棄の意思決定をする前に、借入先から取引履歴を取り寄せ、利率等を確認してみるとよいでしょう。
相続を放棄する場合には、原則として相続開始を知った日から3カ月以内(熟慮期間)に被相続人の住所地の家庭裁判所への申述が必要です。3カ月以内に財産の全体像が把握できそうになく、相続放棄の判断が難しい場合には、家庭裁判所への申し立てにより、この熟慮期間を延ばすこともできます。何もしないまま熟慮期間が経過してしまうと、相続の意思があるものとみなされます。相続開始日から3カ月以内には、被相続人の相続財産・債務をある程度把握しておきたいものです。