戸建て住宅の建替えで、固定資産税の思わぬトラブルに見舞われるケースが相変わらず少なくない。実際、東京都区部では、こうした固定資産税のトラブルをめぐる審査請求の裁決がコンスタントに出ている状況。平成29年1月から6月の半期でも、5件の裁決が出ている。なぜ、トラブルが絶えないのか、探ってみた。

問題は、優遇される「住宅用地」かどうか
固定資産税には、「住宅用地」に対して優遇する制度がある。住宅用地の課税標準を低く抑える住宅用地の課税標準の特例(地方税法349条の3の2、以下、特例という)がそれだ。これは1月1日(固定資産税の賦課期日)において、住宅の敷地になっている土地に適用されるもの。たとえば、200㎡までの住宅用地(小規模住宅用地)については評価額を6分の1にして課税標準とする。固定資産税の税額は、「評価額=課税標準額×税率1.4%」の計算式で求めるのが原則。特例が適用されると、評価額の6分の1が課税標準になるため、事実上税負担が軽減されることになる。
ここでポイントになるのが、土地が「住宅用地」として認定されるかどうか。住宅用地とは、基本的に戸建て住宅の場合、別荘部分のない「専ら人の居住の用に供する家屋」が建っている土地のこと。固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)時点での土地・家屋などの課税客体の状況を認定して課税することになっている。したがって1月1日時点で、住宅家屋が建っていない土地は、原則として「住宅用地」と認定されないことになる。
ただし、1月1日時点でその土地に住宅家屋がない場合でも、一定の要件を満たす住宅の建替えが行われている場合には、「住宅用地」として扱われる(地方税法の施行に関する取扱いについて「市町村税関係」平成22年4月1日、市町村税関係、以下、取扱い通知という)。
その主な要件とは、前記の取扱いを受けた通知の一つ「住宅建替え中の土地に係る固定資産税及び都市計画税の課税について」(平成6年2月22日付自治固第17号)」で、次のようになっている。
1 当該土地が、当該年度の前年度に係る賦課期日において住宅用地であったこと。
2 当該土地において、住宅の建設が当該年度に係る賦課期日において着手されており、当該住宅が当該年度の翌年度に係る賦課期日までに完成するものであること。
3 住宅の建替えが、建替え前の敷地と同一の敷地において行われるものであること。
4 当該年度の前年度に係る賦課期日における当該土地の所有者と、当該年度に係る賦課期日における当該土地の所有者が、原則として同一であること。
5 当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅の所有者と、当該年度に係る賦課期日における当該住宅の所有者が、原則として同一であること。
これらの要件を満たさない場合には、原則として建替えであっても土地は住宅用地と認定されず、住宅家屋のない状態で1月1日を迎えると税額が跳ね上がることになる。
なお、2の要件については今年緩和され、新しい取扱い通知の「なお書き」で「原則として当該家屋の建設が当該年度に係る賦課期日において着手されており、かつ当該家屋が当該年度の翌年度に係る賦課期日までに完成する必要があるが、当該翌年度に係る賦課期日において、当該土地において適当と認められる工事予定期間を定めて当該家屋の建設工事が現に進行中であることが客観的に見て取れる状況である場合にはこの限りではないこと」(総税市第26号平成29年4月1日)とされた。
当初から、建替え工事が長期に及ぶことが適当だと認められる場合には、建物の取り壊しの翌年に工
事が完了していなくても、住宅用地と認定する余地があることを明らかにしている。