国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

相続税節税以外の目的があっても否認された! 審判所、不動産評価で「伝家の宝刀」追認

バブル経済時代に横行した節税対策が最近、再び資産家に提案され、それが国税不服審判所から否認されたことで税の専門家や資産家から注目を集めている。というのも、国税当局の“伝家の宝刀“とういうべき「財産評価基本通達6項」を適用しており、更には、国税不服審判所が節税以外の合理的な理由について事実関係から一つの見解を示したからだ。


借入金で節税が再び否認

これまで土地資産家などに薦められてきた紋切り型の相続税対策といえば、「借入金で不動産を購入することで相続税の節税を」という手法だ。バブル経済のころは、地価暴騰で相続税の負担に恐怖を抱いていた土地資産家に、土地さえあればキャッシュがなくても借入金を利用した遊休地活用で節税できるといった甘言を囁く「節税請負人」が横行していたほど。ただ、こうした節税は、物件価格目いっぱいまでの100%ローンを組んだことから、バブル崩壊後は不動産価値が急落し、ローン返済がままならず、自前の不動産まで手放す憂き目を見た人が多かった。

なにより当時、借入金で不動産を相続開始直前に購入した節税策自体も、否認された事例(東京地裁平成4年3月11日判決、東京高裁平成5年1月26日判決)があり、こうした“尖った節税策”にはリスクが付きものという教訓が生まれた。ところが、喉元過ぎればなんとやらで、最近、同様の手法で節税策を試みるも、当局から否認された裁決事例が注目を集めている(国税不服審判所平成29年5月23日裁決)。

この事例は、借入金で賃貸不動産を相続開始およそ3年前に購入することで、相続税が課税される財産を大幅に圧縮・節税した事案。国税不服審判所は、財産評価基本通達に基づく評価では不適当だとして、国税庁長官の指示する評価方法を採用した評価額を適正と認定したもの。注目される第一の理由は、財産評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価することを定めている「財産評価基本通達6項」という、国税当局としては、“伝家の宝刀“を適用した事案だという点だ。

注目点は売却時期と節税以外の目的

このほか、同事例が注目されているのは、相続人が相続した賃貸不動産を相続税申告後すぐに売却し、借入金を返済している事実関係の下で節税策が否認された点や、納税者側が節税以外に合理的な目的があると主張したにもかかわらず、国税不服審判所に認めてもらえなかった点。

この事件の流れは平成21年に被相続人が購入していた賃貸不動産を平成24年10月に遺産分割協議を成立させ、その半年後に当該不動産と債務を相続した相続人は、およそ取得価額と同程度の金額で不動産を売却していたというもの。

また被相続人は、節税策を実行するため金融機関から融資を受けたが、金融機関の稟議書には「相続対策のため不動産購入を計画、購入資金につき借入れの依頼があった旨及び相続対策のため本年1月に不動産購入、前回と同じく相続税対策を目的として収益物件の購入を計画、購入資金につき借入れの依頼があった」旨の記載があった。一方、相続税申告は評価通達通りで行い取得価額及び、譲渡価額のおよそ30%弱だった。

これに対し税務署は「評価通達に定める評価方法によらないことが相当と認められる特別の事情がある」として、賃貸不動産が貸家や貸家建付地であることに伴う相続税評価の減価等を否認し、鑑定価格と同様の金額で更正したことから争いとなった。

 

1 2
ページ先頭へ