国税不服審判所の判断
国税不服審判所は、
「本件被相続人及び請求人らなどによる本件各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、本件被相続人が本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間に著しい乖離のある本件各不動産を、借入金により取得し、本件申告において評価通達に定める評価方法により評価することにより、本件借入金債務合計額が本件各不動産はもとよりほかの積極財産の価額からも控除され、請求人らが本来負担すべき相続税を免れるという結果をもたらす」と指摘。このため国税不服審判所は「実質的な租税負担の公平を著しく害し、著しく不公平なもの(中略)。評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められ、本件各不動産の価額は、(中略)ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当」
とした。
この考え方は、バブル時代の裁判例と同じ内容といっていいもの。東京地裁平成4年3月11日判決の事例は、被相続人が死亡する約2カ月前の昭和62年10月に、大手不動産会社の公表していた分譲価格である7億5850万円で買い受け、相続人がその翌63年に7億7400万円で他に売却したというもの。東京地裁は、概ね「被相続人が相続開始直前に借り入れた資金で不動産を購入し、相続開始直後に右不動産が相続人によってやはり当時の市場価格で他に売却され、その売却金によって右借入金が返済されているため、相続の前後を通じて事柄の実質をみると当該不動産がいわば一種の商品のような形で一時的に相続人及び被相続人の所有に帰属することとなったに過ぎないとも考えられるような場合についても、画一的に評価通達に基づいてその不動産の価額を評価すべきものとすると、他方で右のような取引の経過から客観的に明らかになっているその不動産の市場における現実の交換価格によってその価額を評価した場合に比べて相続税の課税価格に著しい差を生じ、実質的な租税負担の公平という観点からして看過し難い事態を招来することとなる場合があるものというべきであり、そのような場合には、前記の評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情がある場合に該当するものとして、右相続不動産を右の市場における現実の交換価格によって評価することが許される」と判示している。
ところで、今回の裁決事例では、節税以外の合理的目的があれば問題ないのではないかといった納税者側からの主張があった。一般論として、節税策ではまず、合理的な目的がありそれ達成するためにこうした方法になったと説明できるようにしておくことが大切だとされる。節税効果は副次的なもので経済的な行為としては節税以外で説明がつくことが「肝」ともいわれる。納税者はこうしたことにコミットした主張をしたものとみられるが、国税不服審判所はにべもなく次のように述べている。
「請求人らは、本件被相続人の本件各不動産の取得には、節税や租税回避以外の合理的な目的が存在していた旨主張する。しかしながら、(中略)相続税の負担を免れる目的以外にほかの合理的な目的が併存していたとしても、(中略)本件各不動産について評価通達に定める評価方法を適用すれば相続税の目的に反し、実質的な租税負担の公平を著しく害することに変わりはなく、相続税の負担の軽減以外の合理的な目的によって、本件各不動産について評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情の存在が肯定されなくなるものとすべき根拠は乏しいというべきである」
あくまで節税策には、実質的な租税負担の公平を著しく害するという効果があることに着目した厳しい考えとなっている。このような“尖った節税策“は、益々リスキーとなってきている。




