国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

  • KaikeiZine
  • 税金・会計ニュース
  • 元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:基礎から分かる移転価格税制⑫ 調査で狙われやすい無形資産取引

元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:基礎から分かる移転価格税制⑫ 調査で狙われやすい無形資産取引

海外に製造子会社等を設立し、日本の親会社が保有する製造技術や製造ノウハウなどの無形資産を海外子会社に使用させるケースが多く見られます。このような場合、対価であるロイヤリティなどを適切に回収しているかが重要な論点となります。近年、移転価格調査で問題となりやすいのは、こうした無形資産が関わる取引といえます。

新聞報道事例

以下は、2019年8月6日付けの朝日新聞の記事の一部です。この事例は中国子会社への無形資産の提供の対価が問題となったものです。

ソフトクリーム大手、10億円申告漏れ 中国子会社巡り

ソフトクリーム総合メーカー大手のX社を大阪国税局が税務調査し、2017年までの約3年間で約10億円の申告漏れを指摘したことがわかった。

関係者によると、X社は中国の菓子製造の子会社に対して製造マニュアルなどを提供していたが、対価を受け取っていなかった。子会社は製造した商品を中国国内の別の子会社を通して顧客に販売しており、X社に技術提供の対価を払っていない分、利益率が高くなっていると国税局は判断。子会社の売り上げの一部が実質的にX社の売り上げに当たるとし、国内で計上するべき所得を海外に移していたと認定した。

この事案は、製造マニュアルという無形資産を海外子会社に使用させていたのも関わらず対価を取っていなかったというケースです。その結果として海外子会社の利益率が高くなっていました。

調査で検討される「無形資産」とは

移転価格事務運営要領3-12では、調査において検討すべき無形資産について、以下のように定めています。

3-12(調査において検討すべき無形資産)
調査において無形資産が法人又は国外関連者の所得にどの程度寄与しているかを検討するに当たっては、例えば、次に掲げる重要な価値を有し所得の源泉となるものを総合的に勘案することに留意する。

イ 技術革新を要因として形成される特許権、営業秘密等

ロ 従業員等が経営、営業、生産、研究開発、販売促進の企業活動における経験等を通じて形成したノウハウ等

ハ 生産工程、交渉手順及び開発、販売、資金調達等に係る取引網等

事務運営要領においては「重要な価値を有し所得の源泉となるものを総合的に勘案する」としており、無形資産の範囲を幅広く捉えています。海外子会社にとって「重要な価値を有し所得の源泉となるもの」であれば、法律的に保護されている特許権等の無形資産のみならず、充実した販売網、高い製品認知度、品質管理ノウハウといったものも無形資産と認定されます。

もちろん、ほとんどの企業が通常は何らかの販売網を持っており、また製造に当たっては何らかの品質管理活動を行っていると考えられることから、単にそうした活動を行っているのみでは無形資産を有していることにはなりません。無形資産を有するかどうかを検討する際には、同業他社には見られないユニーク(独自)なものであるか、他社との優位性を形成するものであるか等を考慮に入れなければなりません。その上で、基本的な活動のみを行う他社との比較において「所得の源泉」となるものであれば無形資産と認められることになります。

海外子会社の営業利益率が重要!

親会社が無形資産を海外子会社使用させる場合、対価としてロイヤリティを収受することが多いが、親会社が収受するロイヤリティの額が適切かどうかを判断する一つのメルクマールとして、税務調査では海外子会社の営業利益率の水準をチェックします。

海外子会社の営業利益率が高すぎる場合には、親会社が収受すべきロイヤリティが少なすぎるのではないか(ロイヤリティ料率が低すぎるのではないか)との疑いを持たれてしまいます。

このように、海外子会社の営業利益率の水準を定期的に検証することは移転価格上、極めて重要です。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

ページ先頭へ