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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:令和2年度税制改正④ 子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応

企業買収後の配当及び株式譲渡を組み合わせた租税回避に対応するため、法人が一定の子会社から一定の配当を受け取った場合に、子会社株式の帳簿価額を引き下げる見直しが行われました。これによりソフトバンクグループが海外M&Aに絡んで用いた節税策が使えなくなりました。

ソフトバンクグループによる節税策

今回の改正は、ソフトバンクグループ(SBG)が2018年に行った同社傘下のアーム・ホールディングスと、その子会社のアームリミテッドを通じた節税スキームに対する防止策が盛り込まれたものと言えます。

新聞報道によると、SBGはリミテッド株の4分の3をアーム・ホールディングスから配当の形で吸い上げました。これによって価値が大幅に下がったアーム・ホールディングス株の大部分を同じくSBGの傘下にあるソフトバンク・ビジョン・ファンド等に売却して赤字を発生させました。この赤字を他の部門の黒字と相殺し、SBGの法人税負担はゼロとなりました。

今回の改正では、こうした意図的な赤字が作れないような制度が設けられました。

節税スキームの数値例

問題となった節税スキームの仕組みを数値例で確認したいと思います。

1. 内国法人A社が、外国法人B社の株式を100で取得してB社を子会社化します。B社株式の帳簿価額は100となります。

2. 外国法人B社は、内国法人A社に60の配当をします。

・・・外国子会社から受け取る配当については、発行済み株式又は議決権の25%以上を保有する場合には、子会社からの配当の95%が益金不算入となります(外国子会社配当益金不算入制度)。よって、A社がB社から受け取る配当の95%が非課税となります。

3. 配当後にB社株式を譲渡します。

・・・法人が配当を行った場合には、配当相当額だけ子会社株式の価値が減少することになるため、配当後に子会社株式を譲渡すると、通常は譲渡損が発生します。このケースでは、B社の株式価値は配当相当額である60だけ減少していると考えられるため、A社がB社株式を譲渡する際の価額は40程度となります。そのため、A社はB社株式の譲渡により60の譲渡損が創出されます。

 

このように、現行の制度では、買収等により株式を取得して子会社化した後、当該子会社から配当を非課税で受け取り、配当により時価が下落した子会社株式を譲渡することにより譲渡損失を創出させる租税回避が可能となります。これら個々の取引には違法性はなく、制度の抜け穴となっていました。

そこで、令和2年度改正では、法人が一定の子会社から受ける配当の額が株式の帳簿価額の10%を超える場合、その配当額のうち、益金不算入相当額をその株式の帳簿価額から引き下げることとされました。

 

【改正のイメージ図】

(出典:経済産業省資料)

改正の概要

こうした租税回避行為に対応するため、法人が、⑴一定の支配関係にある子会社から、⑵一定の配当額(みなし配当金額を含む)を受ける場合、株式の帳簿価額から、その配当額のうち益金不算入相当額を引き下げることとされました。

これにより、子会社株式の帳簿価額と実際の価値が同じになるため、譲渡しても譲渡損は生じないこととなります。

⑴「一定の支配関係のある子会社」とは

法人(及びその関係者)が株式等の50%超を保有する子会社をいいます。

ただし、その子会社が内国法人であり、かつ、設立から支配関係発生までの間において、株式の90%以上を内国法人等が保有しているものは除かれます。

⑵「一定の配当額」とは

1事業年度の配当の合計額が、株式の帳簿価額の10%を超える場合の配当の合計額をいいます。

なお、大企業の子会社の中でも親会社に年1割を超える配当をしている会社は多くあり、節税目的のないケースまで今回の規制の網がかからないようにするため、過去10年以内に買収した子会社に限定することとしています。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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