今回は自身の経験からプロフェッショナルと教育の融合を追求して起業家を支援する公認会計士、平林元之氏にお金のカラクリ侍こと松本ゆうやがインタビューしました。
―略歴を教えてください。
ちょっと変わった経歴を歩んできています。大学を卒業後、最初は公務員として就職し、児童館に配属され、3年弱勤めました。そのときに、仕事をしながら公認会計士試験の勉強を始めて、1年半で2009年に1発合格。監査法人トーマツのパブリックセクター部に入所しました。監査法人では行政や第3セクターなどのコンサルティング業務を経験しつつ、上場会社から非営利法人など幅広い業態での監査業務も経験しました。その後、民間企業に転職して監査法人では携わらない業務を多数経験してきました。現在は、これまでのキャリアを経て追求してきた、プロフェッショナルと教育の融合を目指したコンテンツを提供するために独立して開業しています。
―変わった経歴ですね、大学卒業後に公務員となったきっかけは何ですか?
大学時代は司法試験合格を目指して勉強していましたが、お恥ずかしながら、本気でのめり込んでいるといえるほどは取り組めていませんでした。そこで大学4年の時に司法試験を諦めて就職の道を選びました。就職先を選ぶときには、現場でのコミュニケーションを通じて心と心が触れ合えるような仕事がしたいと感じていたので、公務員の中でも市役所という職場を希望しました。配属された児童館では、子どもやお母さんを相手に、子育て相談にのったり、野外体験などのイベント企画といった企画・運営業務を担っていました。2年9カ月、人と直接関われて笑顔をつくれる仕事にやりがいを感じていました。
―公認会計士を目指したきっかけを聞かせてください。
当時から東京で働いていましたが、長野にある実家から帰ってきてほしいとの強い要請がありました。東京で働いていきたい気持ちが強かったのですが、実家からの要望もあったので、東京でも地元に戻っても通用する資格を取って、実家からの要望を受け流せるように資格を目指しました(笑)。
―監査法人時代について教えてください。
2009年合格は就職しづらい環境だったのですが、公務員出身なこともあり、パブリック向けのコンサルに強い監査法人としてトーマツを希望し、運よく入所できました。
パブリックセクター部では国や自治体の総合計画(民間で言う中期計画)、行政評価(民間の事業評価)、第3セクターの評価・効率化支援を担当していました。公務員として働いていたときは現場を担っていましたが、監査法人では仕組みづくりに携われるという面白みがありました。
とくに面白くてやりがいのあった案件としては、千葉県のある自治体の行政改革支援でした。当該市の行政改革は、全国的な行政冊子で経営革新ランキング全国3位になるほどの評価を得ることができ、やりがいを感じました。
―行政の改革って珍しい印象です、どのような改革だったのでしょうか。
マーケティング部があるような、先進的でちょっと変わった改革意識の高い自治体でした。本来、行政は単年度決算なので年度をまたいだPDCAが難しく、前年度踏襲のかたちで、前年度に組んだ予算や計画を予定通りこなすような動き方が普通です。しかし、そういったやり方では歪みが出ることは当然で、市民の声で始まったはいいけれど既に目的を果たした事業がそのまま継続されていたり、辞めづらかったりします。本当に必要な事業かどうか、定量・定性の2軸から評価して見直せるPDCAの仕組みの構築を支援していました。行政の管理職研修では改革意識を醸成するマインド改革から行うくらいアグレッシブな改革でした。
―行政の改革で大変だったことは何でしょうか。
コンサル業務自体もたくさん大変なことがありましたが、行政の改革は監査と異なり、都度仕事をコンペ等で獲得する必要があるため、プレゼンの準備を深夜まで行うなど、仕事を獲るための営業活動がとくに大変でした。また、その点が監査業務との大きな違いだったように感じます。
―監査はどのようなポジションを担当されていましたか?
監査法人には3年3カ月いたのですが、ネット広告系の上場会社の監査、飼料メーカーの会社法監査、独立行政法人や公益法人、国立大学などの非営利組織の法定監査を担当していました。とにかく忙しくて作業に追われていた記憶があります。初めて実査を担当したときには、1年目で早々にも辞めようかと思ったくらいでした(笑)。
―監査で今に活きていることはありますか?
ビジネスの理解力がとても身についたと思います。監査はビジネスの全体像・仕組みを捉えて大局的な流れをつかむことを大切にするため、重要なポイントを見誤らない力が身についたと思います。また、監査は受ける側の立場からすると嬉しいものではないので、嫌がられにくく、監査手続きを円滑にするための人とのコミュニケーションが訓練されたと感じています。
―監査法人の後はどのようなご経歴なのでしょうか?
転職を複数回しています。最初は、教育がやりたくて、受験対策ではなく子どもを自立させメシが食える大人に育てることがウリの学習塾グループに入社して、1年ほど先生をしていました。年中さんから小学校6年生までの子どもを担当していました。
―公認会計士としてのキャリアとしては異例ですね。
人が成長する瞬間が好きで、教育に携わりたい想いがずっとあるので志望しました。公認会計士という専門性からは学びづらい、人の本質に触れられる機会になりましたね。人の本質とは、子どもや母親・父親などの立場によって特性が異なるということや、ビジネスとはちょっと異なる人を惹きつけるエンターテインメントとしてのプレゼンテーション・コミュニケーションスキルが身につきました。ビジネスでのコミュニケーションは、メリット・利害関係などの左脳に訴えかけることが中心で、比較的一方向のコミュニケーションです。一方、エンターテインメントな惹きつけ方は感情を動かすように右脳に訴えかけて、結果としてメリット・ベネフィットにつながるスタンスで、双方向的であり、場を温めていくライブ感があると思っています。
―その後のキャリアについて教えてください。
正直なところ学習塾グループは経験値として得るものも大きかったですが、やはり公認会計士としての条件と比べると難しいところもあり、2014~2019年の5年ほどは公認会計士の資格を活かせる職に戻りました。民間の企業で経理と経営企画のような役割を同時並行で担っていました。経営企画の役割はM&Aのフロントでの交渉役や、複数の新規事業の立ち上げ支援(事業計画や進捗管理や株主説明役や組織づくり)でかなり多忙でしたが様々な経験が出来ました。あまりに多忙でインプットが追い付かなすぎて、4カ月のスクールに通って速読を身につけたくらいです(笑)。
―独立されるきっかけは何だったのでしょうか?
元々いつかは独立したいと思っていて、前職で新規事業の仕組みの立ち上げ方が一通り身についていたのと、自分が果たす役割を終えたと感じていたので、独立したいとの思いが強まっていました。ただ色々なキャリアを経てきましたが、一貫して雇われの身で転職を繰り返してきていたので、給与収入・安定がなくなる不安や家族への責任から、独立することに対して、内心はだいぶ恐怖心を感じていました。
―どうやって「怖い」という感情を乗り越えたのですか?
怖いというのは感情なので、この感情をうまく扱えないとブレイクスルーできないのです。怖いという感情を克服してチャレンジするためには、意外と体を整えたり、メンタルトレーニングが役に立ちます。何か取り組むときにはまず体が資本となりますし、体が思うように使えないと元気が出なかったり、疲れによってメンタルが弱くなったりするものですよね。気づかない間にホルモンや自律神経などもバランスを崩してしまうんです。ちゃんと体が整って準備ができると、心も準備が整ってくるため、心技体をバランスよくトレーニング(修行)することで成功体験が深層心理に蓄積されて、自分にかかっているメンタルブロックをブレイクスルーしやすくなります。
自分も心技体のトレーニングを積むことによって、独立するのが怖いという感情を乗り越えられました。1年半の間、メンターをつけて心身の準備をする修行をした結果です。マインドフルネス瞑想やトライアスロンで体や精神を鍛えるなどを行ったり、普段やらないようなことを意図的にやってみたり、自分の感情に気づくことを意識的に訓練しました。
―独立して、実現したいと思っていることは何ですか?
『人とビジネス研究所』というコンテンツを開発して提供しています。チャレンジしたい人に対して、個人の心身の健康(あり方)からビジネスのノウハウ(やり方)まで必要なすべてを360度支援するコンテンツです。このコンテンツを通して、個人の健康の観点では、健康要素である身体面、精神面、社会との関係性を整えたいと思っています。一方、ビジネスのノウハウの観点では、マーケティング、事業開発などを実践的にすべて学べるビジネススクールとして展開したいと考えています。
―多様なキャリアを積んでこられて新しいチャレンジをされている平林さんですが、キャリアを積む上で大切にしているマインドを教えていただけますか?
好奇心が旺盛なので、知識を集めることも好きなのですが、それ以上に、物事を深堀して本質を探究することを大切にしています。また、評論家がイヤで、当事者意識が大切だと思うので、自分で実際にやってみて経験することを意識しています。そして、会計士が普段扱っている数字はあくまで結果でしかなく、その大前提として、人の想いと行動が先にあると考えているので、人が心技体を整えることによって自立し、想いを実現し、幸せを感じられる、この目的・ビジョンを大切に考えています。
―最後に今後の活動について教えてください。
独立したのでメルマガやnote、Facebook、オンラインサービスといった情報発信に力を入れようと考えています。提供するサービスとしては、BtoBでは、経営者などのエグゼクティブ向けに理念の深堀、現状からのブレイクスルー、組織開発といった人のマインドに触れるような領域からの人材育成・教育サービスを提供していきます。BtoCのサービスとしては、心身を整え自立することによって、自己実現をしていけるコミュニティ兼スクールを運営していきます。とくにBtoCでは、一人ひとりの人生のお役立ちができればと思っています。数年前の自分のように、頑張っている、もがいているけれど、現状打破が思うようにできなくて苦しんでいる方が、自分の未来に果敢に挑戦していける状態を一緒に創り出していけるように、応援をカタチにしていきます。
プロフェッショナルと教育という軸で自身がチャレンジを果敢に行ってきた経験をもとに、これから頑張りたい方をサポートしたいという熱い思いをサービスに昇華してチャレンジを続けていらっしゃる公認会計士、平林さんへのインタビューでした。ご協力ありがとうございました!
(インタビュワー:松本ゆうや)
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