非居住者等から国内にある土地等を購入し対価を支払う場合には、原則として10.21%の源泉徴収が必要となります。ただし、例外として「個人」が自己またはその親族の「居住用」のための購入であって、その譲渡対価が「1億円以下」である場合には源泉徴収は不要とされています。判断に迷うケースとしては、自宅兼事務所や共有物件を購入した場合の1億円の判定です。
≪質問≫
非居住者から「自宅兼事務所」を購入した場合、源泉徴収の必要があるかどうかの判定はどのように行うのでしょうか?
また、「複数の者が共有で土地等を購入する場合」、あるいは「複数の共有者から土地等を購入する場合」の1億円の判定はどのように行うのでしょうか?
非居住者等から土地等を購入する場合の源泉徴収(原則)
居住者が、非居住者等(非居住者や外国法人)から日本国内にある土地等を購入して、その譲渡対価を支払う場合、原則として、その対価を支払う際に10.21%の税率で源泉徴収し、翌月10日までに納付しなければなりません。
源泉徴収の対象となる土地等には、
- 国内にある土地又は土地に上に存する権利
- 建物及びその付属設備
- 構築物
が含まれます。
ただし、この源泉徴収には例外規定があり、個人が自己またはその親族の居住の用に供するために非居住者等から土地等を購入した場合であって、その土地等の譲渡対価が1億円以下である場合には、源泉徴収は不要とされています。
実務上は、この1億円の判定が重要となります。
個人が「自宅兼事務所」を購入した場合
例えば、個人が自宅兼事務所を1億2000万円で購入した場合、「1億円」の判定はどのように行うのでしょうか。所得税基本通達161-18では、土地等を居住の用と居住の用以外の用に供するために譲り受けた個人から譲渡対価が支払われる場合には、居住の用に供する部分と居住の用以外の用に供する部分の対価の合計額により判定することになっています。
よって、個人が1億2000万円で自宅兼事務所を購入した場合には、譲渡対価が1億円を超えているため、源泉徴収しなければなりません。
このように、居住の用に供する部分の対価だけで判定を行うのではないという点に注意が必要です。
「共有」の場合の判定
土地等の譲渡取引では、複数の者が共有で土地等を取得する場合、あるいは複数の共有者から土地等を取得する場合が考えられます。
この場合、譲渡対価が1億円超であるかどうかの判定は、所得税法施行令では、支払金額または譲り受けの対価といった土地等の取得者側を考慮した規定振りとはなっておらず、あくまで土地等を譲渡した側の譲渡対価の額で判定する規定ぶりとなっています。したがって、譲渡者1人ごとに1億円超かどうかを判定します。
【ケース1】複数の者が共有で取得する場合
個人AおよびBが、非居住者Xが保有する土地等を1億2000万円で購入し共有とするケースです。AおよびBは取得した土地等を居住用として利用します。
譲渡者である非居住者Xが受け取る対価の額が1億円を超えているかどうかで判定します。このケースでは、Xが受け取る対価が1億円を超えているため、源泉徴収の対象となります。
【ケース2】複数の共有者から土地等を取得する場合
個人Aが、非居住者XおよびYが共有で保有する土地等を1億2000万円で購入するケースです。Aは取得した土地等を居住用として利用します。
譲渡者である非居住者X及びYが受け取る対価の額が、それぞれ1億円を超えているかどうかで判定します。このケースでは、X及びYが受け取る対価はそれぞれ6000万円であり、1億円を超えていないため、源泉徴収は不要となります。
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