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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:海外不動産を譲渡した場合の確定申告のポイント

日本の居住者が海外に保有していた不動産を売却した場合、日本での確定申告が必要となります。海外の不動産を売却する場合には、不動産が所在していた国でも課税されることがあり、税金の二重払いを調整するためには外国税額控除の適用を受けることとなります。その他にも海外不動産を売却した際の確定申告に当たり注意すべき点があります。

【ケース1】

Aさん(日本国籍)は日本に住んでいますが、海外にある土地建物を譲渡し、利益が出ました。不動産の所在する国でも譲渡益に対して課税され、既に納税しています。この場合、日本でも譲渡益に対して課税されるのでしょうか。もし日本でも課税されるとなると税金の二重払いになるのではないでしょうか。

 

Aさんは、日本国内に住所があり、日本国籍もありますので、所得税法上は居住者(永住者)に該当します。

日本の居住者は、原則として国内で生じた所得及び国外で生じた所得のすべてについて日本で課税されることになります。

したがって、日本に居住する人が海外にある不動産を売却した場合には、国内にある不動産を売却した場合と同様に譲渡所得として課税されることになります(申告分離課税)。

今回のケースでは、不動産の所在する国でも譲渡益に対して課税されているとのことですが、国外所得について外国の法令で所得税に相当するものが課税される場合、日本及び外国の双方で二重に所得税が課税されてしまいます。

この二重課税を調整するために、「外国税額控除」として一定額を所得税額から差し引くことができます。外国税額控除を受けるためには、不動産を売却した年分の確定申告の際に一定の書類を添付する必要があります。

なお、売却代金等の決済が、外国通貨で行われる場合の不動産の譲渡所得の金額、及び不動産を購入したときの取得価額の金額は、原則的にはその取引の日におけるTTS(対顧客直物電信売相場)とTTB(対顧客直物電信買相場)の仲値(TTM)によることとされています。不動産の購入時や取得時の為替レートが異なる場合には、為替差損益を含めて譲渡所得として課税されます。

【ケース2】

Bさんは、勤務地のロンドンで10年以前に購入した自宅に住んでいます。来年には帰国し、その後は日本勤務になる予定です。帰国後にロンドンの自宅を売却したいと考えています。日本では、居住用財産を譲渡した場合には3,000万円の特別控除が適用できますが、海外の自宅を売却する場合にも適用できるのでしょうか。また、適用される税率は何%でしょうか。

 

不動産の譲渡所得は、その所有期間によって短期譲渡所得(売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下)と長期譲渡所得(売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超)の2つに区分され、それぞれ適用される税率が異なります。

短期譲渡所得の適用税率は39%(所得税30%、住民税9%)、長期譲渡所得は20%(所得税15%、住民税5%)となっています。

このケースでは、所有期間は5年超なので、譲渡した年分の長期譲渡所得として申告することとなります。

3,000万円特別控除の適用の可否ですが、居住用財産を売却した場合の3,000万円特別控除は国内の財産に限定していないので、居住しなくなってから3年以内に譲渡するなどの要件を満たせば、3,000万円の特別控除を適用することができます。

一方、所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例(6,000万円以下の部分14%(所得税10%、住民税4%)、6,000万円超の部分20%(所得税15%、住民税5%))、買い換え等の特例、譲渡損失の損益通算及び繰越控除などは、いずれも「国内にあるもの」と規定されているため、適用することはできません。

よって、今回のケースでは、課税長期譲渡所得金額は、「収入金額-(取得費+譲渡費用)-3,000万円」となり、税率は20%(所得税15%、住民税5%)が適用されます。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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