今回は、所得控除について3つのケースを取り上げます。「年の途中で海外勤務となった後に結婚した場合の配偶者控除は受けられるのか」、「海外勤務中に支払った社会保険料や生命保険料は控除できるのか」、「子供が海外留学中に怪我をした場合の治療費は医療費控除の対象となるのか」など注意すべきケースがあります。

【ケース1】海外赴任後に結婚!配偶者控除の適用は?

当社の社員Aは、1年以上の予定で海外勤務となり本年6月に出国しました。Aは日本国内にある不動産の貸付による所得があり、確定申告が必要となるため、親族を納税管理人とする届出書を提出しています。

Aは出国後の10月に結婚し、配偶者を有することとなりました。配偶者には所得はありません。この場合、Aは本年分の確定申告を行う際、配偶者控除の適用を受けることはできるでしょうか。

 

(回答)

親族等が控除対象配偶者又は扶養親族に該当するか否かの判定時期については、居住者の場合、原則として、その年の12月31日の現況によることとされ、その者がその年の途中において死亡又は出国する場合には、その死亡又は出国の時の現況によることとされています。

ここでいう「出国」とは、所得税法上の「出国」であり、納税管理人の届出をしないで居住者が日本国内に住所及び居所を有しなくなることをいいます。
したがって、年の途中で海外勤務により非居住者となった場合、親族等が控除対象配偶者や扶養親族に該当するか否かの判定時期は、納税管理人の届出を提出しているか否かによって次の通り異なります。

イ 納税管理人の届出をして海外赴任した場合 → その年の12月31日

納税管理人の届出をすると、所得税法上の「出国」に当たらないため、原則通りその年の12月31日の現況で判断します。

ロ 納税管理人の届出をしないで海外赴任した場合 → 出国時

本件の場合、社員Aは納税管理人の届出をしていますので、親族等の判定時期はその年の12月31日となります。よってAは、出国後に結婚した配偶者を配偶者控除の対象とすることができます。

【ケース2】海外赴任中に支払った保険料 控除できる?

海外勤務のため外国に滞在し、非居住者であった社員Bが本年9月に帰国し、その後は日本勤務となりました。Bは海外勤務期間中も社会保険料や生命保険料を支払っていました。海外勤務中に支払った社会保険料や生命保険料を社会保険料控除及び生命保険料控除の対象とすることはできるでしょうか。

 

(回答)

社会保険料控除について、所法74条では「居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合・・・(中略)・・・控除する。」と規定しています。生命保険料控除についても同様の規定があります。

すなわち、社会保険料控除、生命保険料控除は、居住者がその年に支払った額が控除の対象となるということです。
よって、本件のように非居住者であった期間に支払った社会保険料や生命保険料は、社会保険料控除や生命保険料控除の対象とはなりません。

【ケース3】長男が海外留学中に怪我 医療費控除の適用は?

C(日本の居住者)の長男は、米国の大学に留学しています。留学中に長男が怪我をして現地の病院で治療を受けました。この医療費は、Cの確定申告において医療費控除の対象になるでしょうか。

 

(回答)

医療費控除は、居住者が各年において、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合に、その年分に支払った医療費の合計額を一定の計算により算定した金額について、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額から控除できるものとされています。

そして医療費の範囲については、「医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるもの」と規定しており、治療の場所について制限する規定はありません。したがって、本件のように、国外で支払った医療費であっても、それが所得税法等に規定する医療費に該当する限り、医療費控除の対象となります。

なお、本件の医療費の支払いは「外貨建取引」になりますので、支払った日のいわゆる「電信売買相場の仲値」によって円換算する必要があります。

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