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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:海外取引と源泉徴収⑤ 海外勤務のために出国する場合の年末調整~「出国時年末調整」

日本企業の海外進出の増加に伴い、社員が海外支店や海外子会社において勤務する機会が増えています。社員が海外で勤務することとなった場合には、日本企業において出国時までに年末調整(以下「出国時年末調整」)をしなければなりません。

海外勤務者はいつから「非居住者」となるのか

海外勤務のために出国して国外で居住することとなった場合、国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には、日本国内に住所を有しない者(非居住者)と推定されます。

具体的には、出国した者の現地における勤務期間が、契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかである場合を除き、その者の住所は国内にはないものと取り扱われることとなります。

したがって、海外勤務期間が1年以上であることを明示した派遣契約や出向辞令等に基づき海外へ派遣された場合は、その出国日の翌日から非居住者となります。

実務上は、社員を海外に派遣する場合には、派遣予定期間を明示した派遣契約書や辞令等を作成し、居住者・非居住者の判定が曖昧にならないようすることが必要です。

「出国時年末調整」とは

日本企業に勤務している社員が、1年以上の派遣期間で海外勤務となった場合、出国の日の翌日から非居住者となります。

この場合、出国年においては居住者期間と非居住者期間が混在しています。

居住者期間中に日本企業から支払われた給与については、会社において源泉徴収された所得税を精算するための手続き(いわゆる「出国時年末調整」)を出国時に行わなければなりません。手続きは通常12月に行う年末調整と同じ方法で行います。

この出国時年末調整が行われた場合には、他に確定申告が必要な所得がないときは、出国時年末調整にて居住期間中についての税務処理は完結したことになります。

「出国時年末調整」のポイント

1 出国時年末調整で控除できる生命保険料や社会保険料

所得税法74条(社会保険料控除)では「居住者が、各年において・・・・・社会保険料を支払った場合又は給与から控除される場合には・・・・・・控除する」と規定されており、同様に所得税法76条(生命保険料控除)では「居住者が、各年において・・・・・生命保険契約等に係る保険料又は掛金を支払った場合には・・・・・・控除する」と規定されています。

すなわち、社会保険料控除、生命保険料控除は、居住者がその年に支払った額が控除の対象となります。

したがって、出国時年末調整で控除できる社会保険料や生命保険料はその年の1月1日から出国日までに支払った保険料に限られます。

 

2 扶養親族等の判定の時期

控除対象配偶者や扶養親族に該当するかどうかは、出国時の現況により判定します。

配偶者や親族に所得がある場合には、出国する年の1年分の所得を出国の時の現況で見積もって、控除対象配偶者や扶養親族に該当するかどうかの判定を行います(所基通85-1)。

 

3 出国後に賞与を支払った場合

例えば、本年4日30月に海外勤務のため出国した社員に対して、6月30日に賞与を支払うとします。賞与の計算期間は昨年12月1日から本年5月31日までであり、計算期間の中には国内勤務に対応する期間(12月1日から4月30日まで)が含まれています。この国内勤務に対応する部分の賞与は、出国時年末調整に含める必要があるでしょうか。

この場合、出国後に支払われる賞与については、国内勤務に対応する部分であっても、出国時年末調整の対象とはなりません。

ただし、出国後に支払う賞与のうち国内勤務に対応する部分の金額は、非居住者に支払う「国内源泉所」に該当するため、20.42%の税率で源泉徴収する必要があります。

出国後に支払う賞与に係る源泉徴収漏れは税務調査でよく指摘される点ですので、注意が必要です。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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