源泉所得制度とは、給与や士業に対する報酬など、特定の支払いを行う際に、予め所得税(源泉徴収税)を差し引いて、当該税額を国に納付するものです。

対象取引

さて、源泉所得税が差し引かれる取引はどんなものがあるのでしょうか。代表的な取引は下記のとおりです。

■給与関係

給与、アルバイト給与、賞与、退職金、など

■報酬関係

公認会計士等各士業への報酬、原稿料、講演料、など

■その他

利子、配当、など

このうち、実務で頻出の給与と報酬に関する源泉所得税について詳しく見ていきましょう。

源泉所得税(給与・報酬)の税額

給与と報酬に関する源泉所得税について、それぞれ見ていきましょう

■給与

給与に関する源泉所得税は、国税庁が出している源泉徴収税額表を元に計算します。給与金額が増加すればするほど、税額が増加する累進課税方式を採用しており、一律の税率を用いることは採用していません。なお、給与計算ソフトを用いたり、そもそも給与計算を社労士の先生に委託している会社が多いため、実際、先述の税額表を確認する方は少ないかもしれません。源泉所得税を差し引く対象は、給与のほか、アルバイトのバイト代、賞与、退職金等も該当します。

詳しくは、国税庁の下記ページをご参照ください

▶給与と源泉徴収

■報酬

報酬に関する源泉所得税は、原則として、報酬金額(原則税抜金額)に10.21%を乗じて、計算します。司法書士に対する支払や、金額が200万超の取引に関しては、計算式が一部異なりますので留意しましょう。源泉所得税を差し引く対象は、公認会計士など各士業のほか、原稿作家や大学教授の講演料などが該当します。

詳しくは、国税庁の下記ページをご参照ください

▶報酬・料金などの源泉徴収

なお、報酬に関する源泉所得税は、対象取引が源泉所得税を差し引くか否か判断が難しいことが多々あります。その場合は、顧問税理士や税務署へ相談するようにしましょう。

納付期限

源泉所得税は、原則として、源泉対象取引の支払いを行った翌月10日までに管轄の税務署に納付をする必要があります。翌月10日が休日の場合は翌営業日が納付期限になります。一方で、給与の支払いを受ける人数が常時10名以下の事業者は、半年に一回、納付を行えば良いこととされています。所得税法や、実務的には「納期特例」と呼びます。1月から6月に行った源泉対象取引に関する源泉所得税については、7月10日に、7月から12月に行った源泉対象取引に関する源泉所得税については、翌年1月20日が納付期限になります。原則と同じく、納付期限が休日の場合は翌営業日が納付期限になります。

実務上、要件(従業員10名以下)を満たす限りは、納期特例制度を積極的に用いることをおすすめします。納期特例のメリットは2つあり、①税金計算と税金納付が年2回で済む②6ヶ月分の税金をまとめて納付するため、資金繰りに余裕が出る(キャッシュアウトが遅い)点にあります。会社の管轄税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、当該特例を受けることができますので、設立時など、早いタイミングで提出するようにしましょう。顧問税理士に依頼すれば、即時提出してくれることでしょう。

納付方法

納付方法は、2通りあり、紙の納付書に金額を記載して金融機関や税務署で納付する方法と、専用ソフトウェアで納付金額の申請を行った上で、ネットバンクで納付する方法の2通りあります。紙の納付書を用いる方法は、納付書に金額や社名、管轄税務署等を記載して金融機関や税務署で納付する方法です。納付書は、納付タイミングで税務署から郵送で送られてくるほか、税務署で手に入れることができます。定期的に納付タイミングがやってくるため、多めに手元にブランクの用紙を保管しておくといいでしょう。

ネットバンクで用いる方法は、e-taxという専用ソフトで、先述の紙の納付書に記載する情報と同じ情報を入力、送信した上で、ネットバンク上で納付する方法です(ネットバンク のpay-easyという機能を用います)。ネット環境と、pay-easyを使用できるネットバンク環境があれば、金融機関等に行く手間が省略できるため、時間的コスト削減に非常に有用です。納税タイミングは、特に金融機関が混み合いますので、それを回避できるのは嬉しいですよね。

会計処理

源泉所得税の会計処理を見ていきましょう。今回は、下記例をモデルに考えましょう。

(例) 弁護士に5万円(税抜)の仕事を依頼。源泉所得税を差し引いた上で報酬を支払い、差し引いた額を翌月税務署に納付

※源泉所得税の計算は、税抜の報酬額に税率10.21%を掛けている(原則の計算方法)

①報酬支払い時

(支払報酬)55,000 (普通預金)49,895

(預り金)5,105

②源泉所得税納付時

(預り金)5,105   (普通預金)5,105

以上のようになります。

なお、預り金の勘定科目については、所得税以外にも、社会保険料や雇用保険料など、使用頻度が高いので、補助科目を付けておくといいでしょう。また、源泉所得税納付時、納付書に給与と報酬の金額は分けて記載するため、源泉所得税の中でもいくつか補助科目を分けておくと、納付時スムーズです(例:源泉所得税(給与)、源泉所得税(報酬))

おわりに

ここまで源泉所得税についてお話ししてきました。会社を運営していく中で、源泉所得税は毎月発生する税金です。仕組みを理解して、適正な納税計算・集計を行うようにしましょう。

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