もう一つ指摘をしておきたいのが、「不正の判断」材料がかなり強引に、国税当局が作り出しているのではないかという点。
消費税は、売上時に受け取った税額から、仕入れ時にかかった税額を差し引いた金額を納める。仕入れ時の税額を差し引くことが認められるのは、仕入れ先の氏名や取引の年月日などを記した帳簿を保管している場合だ。
金の買い取り業者は、中国人から安く金を買い取り、大手業者などに転売することで利益を得てる。ただ、買い取り時に誰から買ったのか証明できなければ、仕入れ税額控除ができない。そのため、多くの買い取り業者では、本人確認のために中国人などの外国人が売却するときは、身分証明書の提示を求め、在留カードのコピーなどを保管していると言われる。
ところが今回、東京国税局は、同社に身分証明書のコピーがあったものの、そのほとんどを「偽物」と判断。繰り返し取引するなどした十数人分について、仕入れ先の氏名を正しく帳簿に記載しておらず、仕入れ時の税額を差し引くことはできないとした。
「身分証明書が偽造だから仕方がない」と考えがちだが、買い取り業者にとって、課税仕入れの要件を満たす条件として、「身分証明書が本物か否かの判断まで求めるのか」と疑問も残る。税理士も「身分証明書が本物か否かを確認する責任を業者が持たなければならないのか」と、帳簿記載の要件の課題解釈ではないかと納得できないものも少なくない。この問題は、今後も大きな焦点になる可能性が高い。
とはいうものの、今回、国税局が一斉に動いたのは、中国人らの金の密輸が大きな社会問題になっていたことに起因する。金は輸入時に税関で消費税を納める必要があるが、これを密輸で免れて日本国内に持ち込んでいるのだ。密輸ルートの温床は、3千人規模の豪華客船を利用した日本への入国。日本につくと、いっぺんに3千人が船を降りるのだから、税関職員も入念にはチェックなどしていられないのだ。



