特許の使用対価でもめていたことがきっかけで、ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授が、大阪国税局から4年間で約22億円の申告漏れを指摘されていたことが分かった。申告漏れのポイントは「供託金」。大阪局は供託金も有効な契約に基づくものなら課税対象となるとして、本庶氏の所得と判断。供託金をめぐっては争いも多いだけに、顧問税理士が事前にアドバイスしていなかったのかとの疑問の声も聞かれる。

2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授が、大阪国税局から2018年までの4年間で約22億円の申告漏れを指摘され、所得税及び過少申告加算税などを含め約7億円の修正申告をしていたことが分かった。あくまでも両者の見解の相違に基づくものであり、「仮装または隠ぺい」ではないことから、重加算税は課せられていない。

ことの発端は、本庶氏らが発見したがん免疫薬「オプジーボ」の元になるタンパク質「PD―1」の特許の使用対価について、使用契約を結んでいた小野薬品工業と本庶氏の間で、納得いく合意がなされていなかったことが原因。

本庶氏は06年に小野薬品工業とライセンス契約をするが、そこで示された使用対価は、「オプジーボ売上高の約0.75%」。これに対して本庶氏は「低過ぎる」と契約内容に不服を表明。その後、13年に小野薬品工業は「自社のオプジーボ売上高の2%、米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)のオプジーボ売上高のうち小野薬品が受け取る額の10%」に引き上げる提案をするも、結局、これも折り合いがつかなかった。しかし、契約は改定されないまま14年、オプジーボの販売が始まった。

一方で、小野薬品工業はBMSと14年ごろから、競合の米メルクのがん免疫治療薬「キイトルーダ」が本庶氏らの持つ特許を侵害しているとして複数の対メルク訴訟を起こしていた。小野薬品工業の相良暁社長は14年9月、本庶氏の研究室を訪れ、訴訟に勝つためには本庶氏の協力が必須と、協力要請した。このとき報酬について、相良社長は、第三者と訴訟して得た金銭についてはBMSが75%、小野薬品が25%の割合で分ける合意があり、本庶氏には小野薬品工業が得る金銭の40%(すなわち全体の10%)を支払う旨を約束したとされる。

本庶氏は訴訟に協力し、17年1月に小野薬品工業・BMSの勝訴的和解に至った。和解内容は、小野薬品工業と共同開発先のBMSの特許権をメルクが認め、両社とライセンス契約を締結するというものだ。

メルクは、頭金として6億2500万ドル(約710億円)を両社に支払うほか、2017年1月から2023年まで、メルクが特許侵害してきた「キイトルーダ」の全世界売上高の6.5%、2024年から2026年まで同2.5%をロイヤルティとして支払うことで合意した。頭金とロイヤルティの分配比率は小野薬品が25%、BMSが75%で、小野薬品は2017年3月期に180億円程度の特別利益を計上している。