国税当局は「供託金」を所得としてみなす傾向が強い

とはいうものの、本庶氏からすれば、特許の使用にかかる契約自体が無効なのだから対価の権利は確定しておらず、また、先方が主張する対価相当額についても受け取っていないのだから納税することもできない。将来対価が確定した時点で申告納税はするものの、この時点では申告すべき所得には該当しないという認識であったのかもしれない。

ただ、仮に本庶氏がそう考えたとしても、顧問税理士も同様の判断だったのか。この時点で顧問税理士がいるなら、「供託」に関して国税当局は、所得とみなす傾向が強いのだから、課税当局を納得させられるだけの理論武装をしておく必要があったはずだ。

本庶氏は9月9日、朝日新聞の取材に対し「ルールであり、僕は特例ではないということ。税理士、弁護士に相談して法律に従った」として修正申告をしている。あくまで推察になるが、この言い分では、事前に供託金が本庶氏の所得と認定され、課税される可能性を検討していなかったのではないだろうか。

国税局が本庶氏を調査しはじめた時期

ところで、修正申告は済まして法的には何の問題もないことになっているにもかかわらず、マスコミがなぜ本庶氏の申告漏れ情報を掴んだのか。本庶氏本人が言うはずもないし、依頼者の秘密保持が法律で定められている顧問弁護士や顧問税理士のはずもない。となると、調査をした国税当局ということになる。

あくまでも推測だが、国税当局が本庶氏の課税漏れに目を付けたのは、2017年1月に米メルクと小野薬品工業・BMSが和解解決に至った直後ではないだろうか。和解内容についてはマスコミなどにも取り上げられ、本庶氏も訴訟に絡んでいたことは知られていた。国税当局としては、小野薬品工業から本庶氏に多額の特許使用料が支払われるものと考え、本庶氏の2018年確定申告が行われるのを待って、調査に乗り出した可能性がある。

また、可能性として2020年6月5日に本庶氏が京大で開催した記者会見から本格的な調査に乗り出したのかもしれない。

いずれにしても、今年は、国税当局もコロナ禍の影響で通常通りの業務が行えなかったこともあり、政府の緊急事態宣言が解除されて実地調査に動いたのではないかと思われる。

課税漏れが指摘されたのは2014年~2018年分。小野薬品工業が2014年からオプジーポの販売を開始してからの分だ。2019年分については、コロナ禍の影響で申告が遅れたのか、申告漏れは報じられていない。