10月1日に緊急事態宣言が解除されたが、その数日後、日本経済新聞(日経)が国税局による大規模な暗号資産(仮想通貨)取引に関する税務調査を報道した。税務調査は2020年から行われてきたもので、緊急事態宣言解除を待っていたような報道に、「税務当局が今年の調査を本格化させる狼煙か」と筆者は思った。緊急事態宣言解除後の税務調査は、例年となにか違うことはあるのだろうか。
日経報道を受け、2021年10月7日にKaikeiZineでも「税務調査で14億円の申告もれ…仮想通貨(暗号資産)の税金がシンドイ3つの理由」(https://kaikeizine.jp/article/26779/)というタイトルで、仮装通貨に関する税金問題について記事を掲載した。日経報道で筆者が気になったのが、緊急事態宣言が明けてすぐに税務調査に関するニュースがマスコミ報道されたこと。日経記者が足で稼いだニュースというのはまがいのない事実だろうが、一方で国税当局内部から情報が洩れない限り、こうしたニュースをスッパ抜くことはできない。
マル査よりも怖いリョーチョー調査
調査を担当しているのは、おそらく査察(マル査)よりもある意味怖いと言われる資料調査課、いわゆる料調(リョーチョー)だろう。
「情報を誰が流した」ということを問題にしているのではない。それよりも、緊急事態宣言が解除になったこの時期に税務調査のニュースがいきなり表に出てくるということは、ある意味、国税当局が「いよいよ積極的な税務調査に乗り出すぞ!」という、納税者に向けてのメッセージだったように思えるのだ。
事実、会計事務所を取材していても、緊急事態宣言が解除された10月に入り、税務調査の調査通知が増えている。調査通知とは、税理士でも誤解されている人がいるが「事前通知」とは違う。調査通知は、事前通知の前に行われ、「実地調査を行う旨」「調査の対象となる税目」「調査の対象となる期間」を納税者に伝える行為。その後、国税通則法74条の9より「事前通知」が行われる。
事前通知では、さらに細かく、
- ①調査を開始する日時
- ②調査を行う場所
- ③調査の目的
- ④調査の対象となる税目
- ⑤調査の対象となる期間
- ⑥調査の対象となる帳簿書類その他の物件
- ⑦その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
を納税者に伝える。