朝日税理士法人の蜂屋浩一氏は、大手監査法人での監査・IPO支援を経て、現法人を立ち上げられた実力派会計人。これまでのキャリアから今でも大切にされていること、今後の業界・経営者としてのビジョンなどのお話を伺いました。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 村松)

公認会計士・税理士としてのキャリア

公認会計士の資格を志したきっかけは何でしょうか。

蜂屋:就職活動を始める際に、友人が通っていた専門学校へ説明を聞きにいったことが最初のきっかけです。元々、人と接する仕事に就きたいという想いを持っていたこともあり、公認会計士を目指すことを決意しました。

試験合格後は朝日新和会計社(現朝日監査法人)に入社されたのですよね。

蜂屋:はい。当時は売り手市場でパーティーのような勧誘が多い中、地に足がついたイメージがあり、自分に一番合っていると思い入社しました。そこで10年働くことになります。

入社後の5年間は比較的小さな外資系企業の監査を行いました。早くから仕事を任せてもらえたことはとても勉強になりましたし、またやりがいを感じていました。充実した日々を過ごす中で違う業務もやってみたいと思い始めた頃担当したのが、IPOの業務です。最初はこんな世界があるのかと驚きました。監査だけでなく、上場を目指すお客様の支援などコンサルに近い仕事もするようになったのです。そこで衝撃を受け、本格的に企業公開部への異動を希望して最後の3年はIPOの業務をメインとしていました。

衝撃、というのはどのようなものでしょうか。

蜂屋:自分の会計士人生を変えるきっかけだったと思っています。大変ではありましたが、クライアントや関係者と一緒に苦労を分かち合い、上場した際はその方たちと一生ものの関係を築くことができました。20年程前に行ったIPOのメンバーとは未だに一緒に食事をすることもありますし、その人たちが転職し、また上場をするときには必ず声をかけてくれます。「お互いに歳をとった」と言いながら、再び一緒に仕事をできることがこの仕事の醍醐味です。「共に仕事をした」という気持ちを強く味わうことができ、「共に作り上げていく」ということにやりがいを感じました。

朝日税理士法人でのキャリア

その後、朝日税理士法人を立ち上げられました。監査法人から移られた理由は何でしょうか?

蜂屋:何となく監査が窮屈になってきていた時代でした。独立性が厳しくなってきて、思うようなアドバイス業務や支援業務ができなくなっていました。IPOも経験をして、いつかはコンサルティングなど、監査以外の方向に進みたいと思っていた頃、監査法人を離れて先輩と税理士法人を立ち上げることを決断しました。

立ち上げ当時どういったビジョンをお持ちだったのですか?

蜂屋:まず1つ目は、中小企業が良質なサービスを受けられていない、という現状を変えたいということ。上場会社のような大きな会社であれば、高い報酬を払い、大きな税理法人からサービスを受けることができるかもしれません。しかし、中小企業では大きな会社同様にサービスを受けられないという状況でした。そこで、もっと中小企業が利用できる、良質なサービスを提供できるような法人を作りたいと思いました。

2つ目は、税理士がいきいきと働き、生活できる環境にしたいということ。当時、働く税理士の給与水準は必ずしも高くなく、とにかく過重労働・徒弟制のような世界でした。試験が受けやすいとか、そういった面においても働きやすい場を提供できるようにしたいと思いました。

この2つが、税理士法人を始めたときの想いです。そして、今でもその想いは変わっていません。お客様にとって先生ではなくパートナーとしてやっていくことや、一緒に働く仲間と連携、連帯して、社会のために役立つ、といった当法人の理念にも繋がっています。

このような考えがあるからこそ、当法人はピラミッド型の組織にはなっていません。業務ごとに大きく3つの組織に分けており、それぞれグループ長はいるものの、タイトなピラミッドではなく、自由に動いていろいろな人と仕事ができます。部門をまたいで仕事をすることも多いです。特定の上司部下ではなく、いろいろな上司、部下が一緒になって仕事をするといったスタイルです。

ビジョンとは他に意識をされていたことなどはありますか?

蜂屋:税理士法人を立ち上げてから、本当に人と出会う機会が増えました。そしてその出会った方々に育てていただきましたし、今でも仲良くさせていただいている方が大勢います。仕事で知り合った方と友達のようになれることも非常に多いですね。

人間関係を築きたいと思ったら、まず相手の立場や、その人が何を目的に私たちと付き合っているかをよく理解しないといけません。

若いときは、本当に1日1回「ありがとう」と言われるように頑張ろうとか、そんなことをやっていました。どの職業に就こうと本当に、どこまでいっても相手は人です。人に対して価値を提供していく人でありたいと思っています。これは今でも変わりません。

経営についてと今後のビジョン

経営をされている中でどのような点でやりがいを感じられますか?

蜂屋:今働いている方の多くは、私も面接をさせていただいています。1対1の関係も持てますし、その方のバックグラウンドもよく分かります。そして、その方の人生や生活をお預かりしているということには責任とやりがいを感じます。税理士法人のような会社は結局会社ではありません。専門家と言われる人たちの集合体なので、普通の会社の帰属意識とだいぶ違うのではないでしょうか。

当法人にいる方は自分が成長したり、仕事をするのに一番良い場だから、ここにいます。だからこそ、経営や組織をガチガチにするよりも、内部書類を少なくするとか、働いていて仕事をしやすい環境を提供することが大事だと思っています。

法人としてのこれからのビジョン、そして先生ご自身の今後のビジョンについて教えてください。

蜂屋:拡大することに価値は置いていませんが、サービスメニューは増やしていきたいです。時代時代で求められるサービスを我々が先回りして提供できるよう、世の中の動きに柔軟に、そして敏感でいたいですね。

今後は一層サービス業としての価値が求められていると思います。例えば、オーナー社長からご相談を受けて「一番税金が安いのはこれです」といって終わりではなく、事業継承の場面では「税金を払っても、こちらの方がいい」と提案するといったことです。相手の背景や本音に踏み込んでいるからこそ、相手が悩むくらい数種類の提案ができる。こういったことが今後は価値になっていきます。

私自身のビジョンでいうと、ある一定の年齢になったら違う仕事もしてみたいですね。自分が代表社員になって、お客様と接する機会が減り、管理業務や営業業務が増えました。もっとダイレクトにサービスを提供したいですね。まだまだ会計士として、税理士として、パフォーマンスを発揮したいという思いが強いです。

KaikeiZineの読者へメッセージ

では、最後にKaikeiZineの読者にメッセージをお願いします。

蜂屋:会計業界は保守的ですし、真面目で変化を嫌がる人も多いように感じます。しかしこれからは変化を受け入れないと、業界として生き残っていけません。

結局、自分に合った場所なんてないと思っています。入ってから自分に合った場所を作るのもいいですし、入った環境の中にさらにぐっと入っていく位の気構えでいてほしい。せっかく税理士や会計士という資格を持っていて転職しやすい立場なのですから、恐れずに変化を起こしてみてはいかがでしょうか。

当法人は、自由な組織、ムードなので、入ってきた人たちがどんどん事務所に変化をもたらしてくれています。現状を変えようとしてくれる人がいることは楽しいし、とてもありがたい。ただその反面、あまり変えていくことを急ぎ過ぎないようにとも思っています。中の軋轢を生むこともありますからね。

そのためには力をつけて、自分の力を皆に認めてもらわなければいけません。その順を間違えると、受け入れられにくいかもしれません。これはどこへ行っても同じだと思います。

会計人のみなさんも、ぜひ変化を受け入れられる、また変化を起こす強さを持って自分の実力を高めていってほしいです。

【編集後記】
あらゆる場面において、人との繋がりを大切にされている蜂屋先生ならではの強いメッセージを感じました。ありがとうございました!

朝日税理士法人

●設立
2002年5月

●所在地

‐本部‐

〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-4 砂防会館別館A 5階

●理念

  • ・専門家集団として社会に貢献する
  • ・専門サービスを通じて顧客の真のパートナーとなる
  • ・専門家としての誇りをもち、互いを尊重する

●企業URL
https://www.asahitax.jp/company/

 

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