赤字を翌年に繰り越すために必要な手続き
- ●最終的に赤字が発生する仕組み
事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得の損失の金額のうち、損益の通算をしてもなお控除しきれない金額を純損失といい、青色申告者はこの純損失を繰戻しもしくは最長3年間の繰越しできます。
損益の通算(損益通算)とは、総所得金額等を計算するにあたって他の各種所得の金額から控除することです。所得の種類により税率が異なるので、どの所得から最初に純損失額を引いていいのかは自由に選べず、以下の通り定められています。
・事業所得や不動産所得の赤字を差し引く順番
経常所得(※)→譲渡所得→一時所得→山林所得→退職所得
※経常所得…事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得
- ●赤字を繰り越すのに必要な書類
赤字を翌年に繰り越すには、赤字だった年に以下の書類を提出しておく必要があります。
- ・青色申告決算書もしくは収支内訳書
- ・確定申告書B
- ・確定申告書第四表
通常の確定申告書類に加え、確定申告書第四表に必要事項を記載して提出します。
- ●繰戻し還付もしくは繰越し還付を受ける際は税務調査に注意
よく言われるのが「還付を受けるとなると税務署からの調査が入る」という点。税金の還付に対して税務署は強く目を光らせています。赤字となった年こそ帳簿を揃えて調査への準備を怠らないようにしましょう。
確定申告書B(第二表)、確定申告書第四表(一)(二)(損失申告用)を書く手順
事業所得以外に収入がなく前年以前に赤字がなかった場合の記入例を示します。
詳しくは、国税庁ホームページ:「令和2年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き 損失申告用」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2020/pdf/003.pdf)を参照してください。
手順1:
申告書第一表…「収入金額等㋐~㋘」欄と「所得金額等①~⑩」欄を記入
(㋙~㋛、⑪、⑫は記入しない)
申告書第二表…「所得の内訳」「総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項」「特例適用条文等」「事業専従者に関する事項」の該当欄に記入
手順2:
申告書第四表(損失申告用)の該当欄に記入
- 「1 損失額又は所得金額」
- ・「A経常所得」欄に申告書B第一表の「所得金額等」欄の①から⑥及び⑩の合計額を記入
- 「2 損益の通算」
- ・64欄に「A経常所得」の金額を記入
- ・78欄に64の赤字を転記
- 「3 翌年以後に繰り越す損失額」
- ・青色申告者は78欄が赤字の場合78欄の赤字を79に転記
- 「4 繰越損失を差し引く計算」
- ・90欄にはゼロを記入
手順3:
申告書第一表…「所得から差し引かれる金額」⑬~㉓、㉖~㉘に記入
申告書第二表…「保険料控除等に関する事項」「本人に関する事項」「雑損控除に関する事項」「寄附金控除に関する事項」「配偶者や親族に関する事項」該当欄に記入