税の納付がある人には、確定申告の申告義務があります。一方、所得があっても控除額以下だったまたは赤字だった人は、申告義務はありません。義務がないなら申告しないで済んだ方が手間が少なくて良いという気持ちになりますが、申告をしておいた方がメリットが生まれる場面も多々あります。赤字での確定申告とは何か、何がメリットで何がデメリットなのかを解説します。

赤字申告はした方が良い? メリット・デメリットは

確定申告は税額の申告をするもので、申告すべき税額がない場合、申告義務はありません。

「その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合で、その超える額に対する税額が、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日の間に確定申告をしなければなりません。」(国税庁タックスアンサー)

申告しないことのメリットは、申告の手間を省けるという点。しかし、以下の通りに赤字でも継続して確定申告をしていないと不都合が生じる場面があります。

<赤字でも確定申告した方が良い個人事業主>

●青色申告者

青色申告者だけの特典として、「純損失の繰越しと繰戻し」があります。

・純損失の繰越し

損益通算してもまだ赤字が残った場合、翌年以後3年間にわたって所得金額から控除できます。

・純損失の繰戻し

前年も青色申告をしている場合は、赤字を前年に繰戻して前年分の所得税の還付を受けることもできます。

 ●源泉徴収されている

個人事業主が源泉徴収されている場合、納めた税金が還付されるためには確定申告の必要があります。

●「非課税証明書」を必要とする

所得額を証明する「所得・課税(非課税)証明書」を提出する必要がある際に、無申告だと証明書が発行できません。

赤字で住民税の納税額がない場合は「非課税証明書」が発行されることになります。

保育園の申し込みや、住宅ローンの申し込み(過去3期分)などで必要となってきます。

●国民保険税が軽減される

国民健康保険税は、確定申告や市民税申告などがないと正しい算定ができません。住民税非課税の場合、国民健康保険税の軽減対象になる可能性や医療費の自己負担限度額が低額になる場合もあります。

 ●変動所得がある

白色申告者でも、変動所得がある場合は変動所得の損失額の繰越控除ができます。

変動所得とは、事業所得や雑所得のうち、漁獲やのりの採取による所得、はまちやまだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠貝の養殖による所得、印税や原稿料、作曲料などによる所得をいいます。

●災害により事業用資産などに被害を受けた

白色申告者でも、災害により事業用資産や棚卸資産などに被害を受けた場合、その損失の金額を事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入することができ、損益通算してもなお引ききれなかった損失の金額は繰越控除できます。

なお、たとえ赤字でも帳簿の保存義務はあります。ですから申告をしなかったので帳簿を全部破棄して良いということにはなりません。