国際事案はここ5年間で最高件数
経済社会のグローバル化の進展に伴い、個人・企業による国境を越えた経済活動が複雑・多様化する中で、海外取引を利用して海外に不正資金を隠すなどの国際事案も後をたたない。2年度は、前年度を2件上回り過去5年間では最高となる27件を告発している。不正事案を見ると、在留外国人による消費税不正受還付事案はどのほか、海外法人を利用して法人税を免れた宝飾品製造会社を告発している。例えば、国内外からダイヤモンド等を仕入れ、宝飾品として製造・加工し、国内の宝飾品販売会社へ販売するC社は、香港法人に対する架空の原価(材料費)を計上するとともに、香港に開設された同法人名義預金口座に不正資金を送金し、留保するなどの方法により法人税等約3800万円を脱税していた。
貧困ビジネスで8900万円を脱税
社会的波及効果の高い事案としては、近年増えているホームレスやネットカフェ難民等の生活困窮者へ宿泊施設を提供し、受給した生活保護費から家賃収入を得る「貧困ビジネス」に対して調査が行われた。その結果、貧困ビジネスを運営するグループ法人が、現金で回収した家賃収入の一部を除外するなどして法人税等約8900万円(4社合計)を免れていた。また、中国などの海外法人による北海道のリゾート地等の買収が話題になったが、これらに関わる不動産業者への調査も行われ、訪日外国人に人気のスキーリゾート地の北海道ニセコ地区において、外国法人等を相手に不動産取引を行っていたが、借名名義で不動産取引を行い、収入がないよう仮装するほか、虚偽の請求書を作成して架空仕入高を計上する方法により法人税約2900万円を脱税していたことを把握している。