会社の中はIPOムード、、だけど本当に自分の会社はIPOできるのだろうか。漠然と不安に感じている従業員は実際に上場できた会社でも多いです。本記事ではIPOを狙える会社とはどういった状況なのか、特に事業性の観点から従業員目線を折り込んで説明していきます。

目次

  1. 規模の要件
  2. 事業性
  3. 東京プロマーケット
  4. まとめ

1.規模の要件

IPOはある程度の規模が必要です。これには2つの観点があります。1つ目は、IPOチャレンジするための体力があるかです。2つ目は、形式要件のクリアを目指せるかです。

 

①IPOチャレンジするための体力があるか

IPOをチャレンジするには様々なコストがかかるためです。IPOを契機に設ける仕組みの整備や運用をする人員の人件費、監査法人や弁護士など専門家費用、証券会社への手数料などがあります。マザーズに上場するまでに3年間ほどで最低3億円かかると言われています。スムーズに行くことは稀なので多額に係ることが想像しやすいところですね。

言ってしまえば、IPOを目指さないならかけなくても良いコストとも言えますので、このコストを負担しながら経営できる体力が必要となります。

また、IPOを成功させるためには形式基準をクリアするなど売上や時価総額について成長を必要とする場合がほとんどです。こういった場合、組織成長のための投資も必要となります。営業の増員のための人件費や開発費、人員が増えたり、複雑化する業務を管理したりするためのマネジメントツールのコストなどを投資していくことが必要となります。

 

②形式要件のクリアを目指せるか

たとえば、マザーズだと上場時に時価総額5億円以上であることが必要です。この値を超えていけるかということです。IPOを目指し始めたタイミングにおいて、3年後であれば時価総額が5億円は十分に超えていけるという状況なら可能性があるとなるでしょう。

可能性が無さそうな例としては、IPOを目指し始めたタイミングで売上が5千万円しかなく、組織化もほとんど出来ていない個人事業と変わらないなど、規模を伸ばしていける見込みや根拠がない状況が挙げられるでしょう。

対して、可能性が有りそうな例としては、IPOを目指し始めたタイミングでの売上が同じく5千万円でも、その売上が属人化しておらず、テストマーケティングが終わっていて、仕組み化が十分にできている場合です。この場合は、規模を伸ばしていける見込みがある状況と言えるでしょう。

 

③その他

なお、マザーズは上場時の時価総額が5億円必要で、かつ、撤退基準の時価総額は2.5億円です。これが意味するところはギリギリ時価総額5億円で上場しても上場廃止になるまでの時価総額にはゆとりがあるということです。

しかし、2022年の4月の市場再編後のグロース市場では上場時の時価総額が5億円必要で、かつ、撤退基準の時価総額は5億円です。これが意味するところは、時価総額5億円のギリギリ上場は実態として狙えないということです。ゆとりをもって時価総額8~10億円は最低でも必要です。最低必要額のイメージを申し上げましたが、一般的に時価総額は上場後「株価×発行済株式数」で計算され、株価は変動もし得るので、上場時には十分なゆとりを持った時価総額が求められることになります。

2. 事業性

①新規性や独自性

IPOが狙える事業かについて、別角度からも考えてみましょう。新規性や独自性といった観点も大事と言われています。IPOの成功は新しい業界や分野が誕生したとき、その中で1番乗りが上場しやすく、2番手、3番手は難易度が上がるといわれています。

1番乗りも先例が無いという意味で審査のハードルがあるので、ビジネスモデルなどへの信頼が得づらいという観点からは特有のハードルがあります。しかし、それ以上に2番手、3番手は上場しづらいといえます。

上場する際に、ビジネスモデルとして業界における競争優位性といった強みを客観的に説明できることが重要です。これは、企業価値の成長可能性や安定度の論拠として重要だからです。

そして、この競争優位性において先に上場している企業というのは業界の中でもポジションに大きな強みが出ます。新規性や独自性としても1番手なのでビジネスモデル自体が認められやすいです。2番手以降だと新規性や独自性は1番手との違いを明確に語って競争優位性を別の論点からも語れなければいけないハードルが出てきます。

 

②上場させる意義

新規性や独自性と似た要素として、市場銘柄としての豊富な種類という意味でのバリエーションの価値があるかといったところが日本の市場では重要視されているように思います。

実際に聞いたことがないでしょうか。売上や利益は上場するに足る十分な企業なのに上場がなぜかずっとできない会社があるといった話です。もちろん定性的な課題を抱えていることもありますが、そういった課題もなにもないのに上場させてもらえない会社が実際にあるわけです。上場できない要因に対し、上場させる意義が弱いといった表現がされることがあるわけです。

 

③成長可能性の合理的な根拠

上場した会社がすぐに撤退基準となる時価総額に落ちぶれていっては、市場として上場させた面子が丸つぶれです。そのため、上場後も企業価値を最大化させられるように安定して成長していくことが求められます。では、どのような際に成長の安定は読み取れるでしょうか。

企業がビジネスを展開する市場の成長性から安定について論じることができです。まず、シェア争いよりも市場の成長性に牽引されるような成長は安心感が強いです。既存市場よりも新市場の会社の方が新規上場の可能性があるとして注目されるのはこのためです。そして、現在の日本で言えば、人口の1/4が65歳以上となり、市場が縮小していくと言われています。このため国内における市場でビジネスを展開していく場合、売上を落とさないために、その縮小にどう対策を持っているか、影響をそもそも受けないかの明確な回答が必要となります。この場合は、市場の成長性ではなく市場のシェアをいかに競争優位性のある強みから獲得できるか、M&Aによる戦略などが回答しやすい要素となってきます。国内の市場だけでなく、海外での展開なども成長の安定について回答の方向性としては合理性を持ちやすいでしょう。

 

余談になりますが、2022年4月以降は東京証券取引所の再編があります。新興市場として位置するグロース市場では、上場後において事業計画を開示していくことが必要です。その開示の際に上記のような安定的な成長戦略についても記載が求められることになります。

3.東京プロマーケット

ここまで述べた説明は、一般投資家向け市場のマザースへの上場を想定していました。最近の上場トレンドとしては、マザーズと同じく東京証券取引所の市場の一つである東京プロマーケットというプロ機関投資家向けの市場もあります。市場自体は15年以上存在しているものですが認知度は低いです。しかし、東証の市場としてブランド力などメリットは大きな市場です。

こちらの市場での上場の実現性はマザーズよりもハードルがだいぶ低いと言えます。これは、東京プロマーケットが金融リテラシーが必ずしもあると想定されない不特定多数の一般投資家を保護する必要のあるマザーズと異なり、金融リテラシーがあるという前提と成るプロ機関投資家向け市場のため、投資家保護のために求められる仕組みが簡素化されているためです。開示に四半期報告書や内部統制報告書が無いことがわかりやすい特徴です。そして形式要件すらありません。赤字の企業でも上場している事例があるくらいです。

誤解を恐れない言い方をすると、管理体制さえ整えれば上場できます。月初10日で取締役会を開いて月次決算が対応できていて、コンプライアンスに問題がなく、半期決算と年度決算が開示できれば上場できてしまえるのです。

最近は、意図的にまず東京プロマーケットに上場して、その後マザーズやジャスダックにステップアップ上場する事例も出ています。これは理由があります。そのほうがより可能性を高めてマザーズやジャスダックに上場できて、仮にスムーズに上場できなかったときも東証の上場会社であることは変わらず、信用リスクをある程度は守ることが出来るからです。

ステップアップ上場のほうが上場しやすい理由として主なところとしては、東京プロマーケットへの上場も東証への上場に変わりはなく、東証にとっては開示実績が信用として得られているためです。ステップアップ上場は迂回ではなく戦略と呼べるでしょう。実際に、現在ステップアップ上場できている企業は目覚ましい成長を遂げています。

4.まとめ

会社としてIPOにチャレンジすることを応援したいと思いながらも、何のために自分も頑張るのか。その意義を理解したとしても、IPOは実現が難しいものと言われおり、長期にて取り組まないとならないことから、本当に自分の会社は上場できるのか気になるところでしょう。冷静に考えてみると、事業の成長性は従業員であれば想像することができます。

本記事では、事業性の観点からIPOの可能性を検討するポイントを端的に述べました。最後になりましたが、もちろんIPOを実現する上では、管理体制が整備・運用でき、コンプライアンスがきっちりと守られていることが何よりも前提となることを添えて結びとしたいと思います。

 

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IPOという言葉は独り歩きしがちですね。
しかし影響を受ける従業員には十分な説明がされないことがどの会社でも慣習となってしまっています。

IPOに関することは会社のガバナンスに関することなので知っていて損がないどころか組織としては重要なことです。経営者にとっては従業員の理解を得られ、孤独なIPOチャレンジからも解放されます。

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