IPOといえばよく聞くキーワード「資本政策」。しかし中身を知っている人はほとんどいないのが実情ですね。では、社長やCFOだけ知っていたらいいのか。実務的にはそうです。ですが従業員も知っておくと、得体の知れないIPOがスッキリと親しみやすくなるため大枠は理解しておくことが望ましいでしょう。本記事では、IPOにおける資本政策について従業員の目線を踏まえて解説します。
目次
- IPOの資本政策とは
- 資本政策の要素
- 社長は資本政策でお金持ちになれるのか
- ロックアップ
- ストックオプション
- まとめ
1.IPOの資本政策とは
IPOをするということは株式を市場に売却するということです。株式を市場に売却するということは会社にとっては「資金調達」をするということでもあり、「持ち株比率」へ影響が生じます。
「資金調達」には、借り入れ調達と資本調達の2つの方法があります。よって、IPOの実現のために急速な成長に必要とする資金ニーズに対して2つの方法のバランスを考慮した上で、「資本調達」を検討することになります。
「持ち株比率」は経営権に関わってくるので、何も考えなしに株式を売却することは危険な行為です。特にIPOの際の株式売却は持ち株比率が大きく動きます。丁寧に考える必要があるのです。これを資本政策といいます。
「資金調達」と「持ち株比率」を併せて考えると、誰から、どれ位の金額を、いくらの株価で資金調達し、経営陣の持株比率をどの程度確保して経営の安定を図るのかといった観点での熟考が必要となります。
また、IPOをする際にクリアしないといけない形式基準を一つの要因として、市場への株式売却が行われます。マザーズの場合、上場時の見込みとして150人以上の株主が必要とされています。
- ・上場時までに500単位以上の公募を行うこと
- ・流通株式数 1,000単位以上
- ・流通株式時価総額 5億円以上
- ・流通株式数(比率) 上場株券等の25%以上
通常は上場前の非公開会社であればオーナーが株を100%保有しているだけであったり、1~2社程度のファンドが資金を提供していたりするに過ぎないことが多いです。それが上場すると急に株主が150人以上にもなるということです。
株式を売却するということは、株主が会社経営に参画できるということになります。これは、経営者の意向と対立する可能性のある株主の権限が大きくなり、経営の意思決定を迅速に行えなくなるなどの弊害が発生する恐れがあるということです。
また、資金は集まれば集まるほどよいというわけではありません。株主は持ち分に応じて配当を得るので、無駄に集まると投資リターンや、議決権が減るため必要な資金ニーズに対するだけの金額が必要です。これはすなわち、株式を買える株主は無限ではないということ。後から買おうと思った人がもう十分な購入枠がなかったりすることが起き得て、資本参画してもらうべきビジネスパートナーに参画してもらえないこともあり得るということです。
資本政策はやり直しが基本的にはできません。調整するとすれば、不相応に割高な価格で株式の売買を行うなどが必要となってしまうため、経済的に非効率で動かしづらいからです。このため資本政策はIPOにおいてとても重要な要素となります。