国税当局が海外資産の重要資料と位置付けている「国外財産調書」の総提出件数が7年連続で増加していることが分かった。「令和2年分の国外財産調書の提出状況」では、総財産額も過去2番目となるなど、資産を海外へシフトしている傾向が続いている。そのため、国税当局では近年、「海外事案」の税務調査も力を入れており、現在国会でも財産債務調書の見直しとともに国外財産調書を見直すことを審議している。
国外財産の申告漏れ防止に向け創設
国外財産調書制度は、国外財産の保有が増加傾向にある中で、相続税申告の際に被相続人の海外財産に係る申告漏れが見受けられるなど、国外財産に係る課税の適正化が喫緊の課題となっていることを背景に平成24年度税制改正において、国外財産を保有する者が保有する国外財産についてまとめた「国外財産調書」を毎年提出してもらうことにより申告漏れを抑止する等の目的で創設され、平成26年1月から施行されている。
制度の仕組みは、その年の12月31日において保有する国外財産の合計額が5千万円を超える居住者は、財産の種類・数量・価額など一定事項を記載した国外財産調書を翌年3月15日までに税務署長に提出する必要がある。そして、この調書は所得税の納税義務がない場合でも、毎年住所地を所轄する税務署長あてに提出することとされているところも肝となっている。
また、制度創設以来、数次の見直しが行われている。直近では、令和2年度の税制改正では、相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化、国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し、過少申告加算税等の特例の適用の判定の基礎となる国外財産調書等の見直し、国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示又は提出がない場合の加算税の軽減措置及び加重措置の特例の創設など。