加重措置を受けたのは307件
制度では、適正な提出を確保するためにインセンティブ特例等が設けられており、国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、調書が期限内に適正に提出されていれば加算税が5%軽減される。一方で、調書が適正に提出されていない場合には加算税の5%加重とされる。また、故意の不提出や虚偽記載に対しては1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される罰則も用意されている。
令和2年分における軽減・加重措置をみると、令和2事務年度における所得税及び相続税の実地調査の結果、軽減措置を受けた件数は126件(増差所得等金額43億3960万円)、加重措置を受けたのは307件(増差所得等金額88億792万円)となり、126件が調書を出したものの申告漏れがあったことになる。
なお、国外財産に係る所得税等の調査に関して修正申告等があり、加算税の適用のある者が、その修正申告等の日前に、国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る書類(電磁的記録や写しを含む)の提示又は提出(以下「提示等」という)を求められた場合に、その日から60日を超えない範囲内で、提示等の準備に通常要する日数を勘案して指定された日までに提示等がなかったときは、提示等をする者の責めに帰すべき事由がない場合を除き、「加算税の軽減措置は適用しない」、「加算税の加重措置については、加算割合を5%から10%に引き上げ」の措置が行われる。
税制改正では国外財産調書及び財産債務調書で両調書を見直し
現在、衆議院から参議院に移り審議が行われている令和4年度税制改正において、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律の一部改正」の中に、国外財産調書及び財産債務調書の見直しが含まれている。
国外財産調書とともに改正される財産債務調書制度は、富裕層の適正な課税を確保するための補助的な手段として、所得税と復興特別所得税の確定申告書を提出しなければならない者で一定の基準(所得基準及び財産基準)を満たした場合、その保有する財産及び債務に係る調書の提出を求める制度として平成27年度税制改正において創設され、平成27年12月31日時点の保有分から適用が開始されている。一定の基準とは、その年分の総所得金額などが2千万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産(有価証券)を有する者とされ、その財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載した調書を、その年の翌年の3月15日までに所得税の納税地の所轄税務署長に提出することとされている。
なお、国外財産調書を提出する者が財産債務調書の提出義務者に該当するときは、「財産債務調書」もあわせて提出する必要があるが、この場合、財産債務調書には国外財産の価額の合計額以外の記載は不要となるものの、国外の債務については国外財産調書の対象ではないため財産債務調書にその詳細を記載する必要がある。